【朗読】野村胡堂audiobook　「三万両五十三次　二、情炎編」「二、闇の刃」　　ナレーター七味春五郎　発行元丸竹書房

【朗読】野村胡堂audiobook　「三万両五十三次　二、情炎編」「二、闇の刃」　　ナレーター七味春五郎　発行元丸竹書房

闇の刃 1 旦那バサリと正子に触る音小平優は嗜みの伊を引きつけてガバと起き上がりました大変なことをお知らせいたします入っても構いませんか確かにめかしい女の声の前からさしてくる遠い有明の明かりに何やら生子の外にほのめく姿まで見えます何者だと平太言うそういううちにも一等を左に引下げて右手に枕本のひれを掴みました生まれつきの干渉と職業的な用人のためネマに明りをつけさせませんが日頃の足並みで法学や物の明りなどに孫つくようなことはありませんしなんて危な声だろう外の声はかせるようにそれを抑えて2ず音もなく生じを引き明けます何の用事だまんざら枕探しや用らしくもないと分かったか平田ゆは嫌いを伸ばして畳の上につったち上がりました大げさなの様子を見せるのが相手が女と分かっているだけにさすがに後目たかったでしょう誰だって構わないでしょ大事なことを教えてあげるんだから女は立ち見のまま刃のような寒い風と一緒にすらりと滑り込んで静かに後ろの生子を閉めました何者だ名言わぬか明かりがあったらおめにかけたいくらいそりゃ美しい女近づくとほのかに女の肌が匂って部屋の中を温めるような気持ちになりますバカ飯盛りやよたかに用事はない明日は旅立ちだ邪魔をせずに帰れ帰れ平田優はさすがにむっとした様子ですや男のへしんで冗談を言う女どうせと思わなかったのも無理はありません旦那私はそんな嫌なものじゃありません大事なことを教えてあげましょうちょいとお耳をそこでいえま巨人向いやりも鉄砲も持ってるわけじゃありません八丁ぶりの旦那州が女の親切が詳さに大事なお嬢さんに逃げ出されちゃ世上の物笑いになりますよなんだと女お隣の部屋のお嬢さんが男にそそのかされてここから抜け出そうとしているのご存知ですか旦那何小へはすっかり職業意識に目覚めました薄明かりの中に匂う女影のように捉えがいながらキシャな姿と美しい声と初々たる気象とを持っていそうな女の言葉がどんなに重大なものかをようやくはっきり知ることができたのですね旦那私はご覧の通り旅の女でこのはごへ泊まった客の1人ですが今し方そこの大南の前を通ると旦那の大供の美しいお嬢さんと者風の若い男がひれずここから抜け出してどこかへ逃げようという大それ

た相談をしておりますどうせとの色事だから放っておく方がくどくでしょうが困ったことにその者風の男というのは酒場から一緒になった私のつと申しても身内のものでも知り合いでも何でもありゃしませんあんまり様子がかわいそうだから仏心で連れてきてやった男ではありますがこのまま放っておくと私もかりいになりそうで怖くてなりませんお嬢さんのが八丁堀の旦那州ということはおっしゃらなくたって様子合でわかります私の潔白を分かっていただくために罪なようだが目をつぶってお知らせ申しますね旦那レんがこれだけさくうち香ばしい息を頬に感じながらコイル平台は廊下を下った境の商人まで身を寄せました 2耳を傾けるまでもありません廊下を下ってお蝶の部屋から聞こえるのは紛れもない男女のさきです旅の疲れで熟睡していなかった小兵だ優ほどのものが元より知らずにいる通りはありません無理に押しつぶした声は上に激すると思いの他はっきりするものですね旦那私は枕探しやなんかでないことはお分かりでしょうそれともあのお嬢さんを逃がしても構わないとおっしゃるのならこのままお休み遊ばせ余計なおせかを詫びして黙って私も引き下がりましょうね旦那小木平台は物も言いませんでしたこの不思議な女のよく動く下の根よりも夜逃げの相談をしている隣部屋の男女の方がよっぽど気になったからです最もこの女を江戸から街道筋を荒らし回って網にも森にもかからぬナの女足かろのおれんと知ったら別に考えよもあったでしょうが銀よき小木平田優は道中稼ぎの一筆を見るにしてはあまりに身分が高すぎましたいや直産と言っても200国のより巻にセタを鳴らして歩く町方役人が女泥棒の顔を知って悪いはずはないのですが加ろのレはあまりにも敏章光景で役人に尻尾を捕まえられたり人相書きを取られたりするようなヘマな女ではなかったのです大概の仕事をおれんは影で操りました吉座と平行と六方だけとその他56人の手下がおれんの胸を受けて手足のように働きました江戸一番と言われた御用聞きの蒼太でさえ噂には聞いておりますがまだれんの顔を見たことがなかったのですかろというあだ名はそのためにつけられました補足することのできない出鬼没つぶりというよりも誰も本当の買う形を見たものがないという謎だったのですが3万量の餌の前にはさすがにかろの姉も素顔の

美しいところを見せて一役を買って出ずにはいられなかったのでした3万両をもにすれば仲間に一箱ずつ分けてやってもレの手に2万両は残りますそれを松へなり九州へなり持って行って牛の金とらずの体を持とうといった途方もない望をめぐらして一斉1台の伊山を買って出たオレだったのです小平田優はこの女の下の長さに驚きましたが旅先ながら吟味よりの寝部屋へ入り込んでくるのをまさか名手の女足とは知るよしもありませんそれより大事なのは差し迫ってお蝶の始末ですこの嫁に満一のことがあればこれまで仕組んだ行列がたった1遍でダメになることはあまりにも明らかですよく教えてくれた例は後でするあれだんなそんなことおっしゃっちゃ2人はそう言いながらからを開けて廊下へ出ましたあは生じひい中からはお蝶の柔らかい声と千松の興奮した声とそれよりも奥目の弾んだ声が手に取るように聞こえます平田優は一等を左に下げたまま正直に手をかけましたがふと思い直したようにその手を引いてしまいましたまだ30いくつ分別は年寄りでも若々しさにみる平優が娘の根へ黙って飛び込む後ろめたさを感じたのでしょう旦那どうなさいますしばらく待て取り逃がしてはならぬ五平を起こして散歩から飛び込んでみようそれは広実と分かりきっておりますがおれんの思惑などに構わず平田優は足音をしばせて五平の部屋の方へたどりました中のさやきは何に驚いたかぴたりとやみます [音楽] 3当の兵は小平優に呼ばれると尻尾に火のついたネズミのように青面くらいで飛び起きました慌てふめの大骨よりで落ち着かせて正子に耳を当てると中から聞こえるのはよりの相談に余念もないお蝶の声千松の声それに2人の無分別をとめようとする下女の奥目のかき声だったのですそのうちに中の声は吹き消したに旗とみました小平田優と五平は顔を見合わせました何のためにさく声が耐えたか分かりませんがとにかく中の3人に感づかれたことだけは疑いもありません楽屋裏をお目にかけるとこの時平王や五平とは反対側の廊下にいるおれんが生子を細めに開けて驚き騒ぐ3人を目顔で制しながら千松にた 1つ残った逃げ道2階の日差しへ空いた腰高の甲の方をさしたのでしたおれんの顔は猶予も妥協も許しませんでしたその引き締まった唇や星のように輝く瞳は千松

の後ろに刃の望んでいることを百千万元よりも [音楽] 有便堂けました外は降るような星空寒い風が駆けつれた刃のようにさっと吹きいります千松は黙ってお蝶を差しまねきました青白い顔が寒さと激動にこってもはやただの臆病な手代ではありませんお蝶は身を投げかけるように塩末に寄り添いましたかいながらなんとなく必死の力がこもって今までお蝶が経験したこともない男性の強さがひしひしと身にしりますしかし窓はかなり丈夫な行子で千松の手では降りも破りもできそうはありません千松お嬢様2人は顔を見合わせてさき合いましたそれを合図のようにくの方から飛び込む平もそれに遅れてはおりませんでした左から入った五平は矢にを蝶に飛びつき正面の平湯はまっすぐに千松に迫り右手のレは奥目へ絡むような顔をして守よく安藤を蹴飛ばしてしまいました中は真の闇あかりくもが入ったぞ高らかにののしる平太優の声を聞くと会場開花にわかに風音をはんでわとはち切れるような騒ぎになりますしかし千松はその間じっとしていたわけではありません手探りに光子を探し当てると腰高へ飛び上がるように2つ 3つ猛烈な体当たりをくれますそれと悟った平素は危なとみたか一等を引き抜いておれと内に切り下げます松は術もも知ってるわけではありませんが体中が神経になっているので本能的にさっと身をかわしました刃は肩先をかすって片袖をついた様子ああ妙に鼻の先がきな臭くなりますくも逃げると切るぞ半分は脅かしのつもりだったのでしょう続いてもう人たち横に立てようとする平優の刃からから離れなければもはや千松は逃れようはありませんその時どこから誰が放ったかわ平田優の額へ枕元に置いた水差しを叩きつけたものがあります幸い振りかぶった腕にあたって怪我はありませんでしたが水さしは真に割れて氷のように冷たい水が平湯の頭からざぶりと浴びせたのでした 4水さしを放ったのは奥目かお蝶かそれともおれんか分かりませんがとにかく小平田優の攻撃はそのためほんのしばらく阻まれました正月19日存分に突きのさえた真中に思いきりよく頭から冷たいのを浴びせられたのですから平優にしては人たち

浴びせられたほど答えますえ何をする無しして窓のほ明かりを背負った血祭へ今度は真剣に切りかけましたがその肘も闇の中から飛び出した誰かの手に支えられましたその隙に水の体当たりをくれた皇子はメリメリと23本折れてひしの上へ千松の体は危なく吐き出されます待て待て追いすがる平太優の一等はまたもかい女の腕に引き止められて切先はわずかに破られた光子をはっかに切り上げましたえ邪魔ですな足を上げて蹴飛ばすとするとくるりと前に回って皇子の破れに立ちふさがったのは思いもよらぬお蝶の捨て身になった必死の姿だったのですおりからなんだなんだとんだの会のようだったがバラバラと飛び込んできたのは御用聞きの蒼太をを始め向こう側にじんどった手先人足の一軍気の聞いたのは廊下のありけを外して明りと一緒にねれた姿のまま飛び込みますくは久しへ出たみんな外へ回れと一等を背後にかばったまま小平なんです旦那真っ先に飛び込んだ蒼太はそれを腑にちない顔に眺めやりましたなんでも構わぬ見つかり次第て捨てる縛るには及ばぬぞへここは1人でたくさんだくもは久しから表へ飛び降りるに決まっている平田優の指しは辛辣でしたそれであたんな外へ網を張りましょうあり匹逃すこちはございません蒼太は形成を察したものか下な微少を残して手下のものを促すように廊下へさっと飛び出しましたどいたどいたはそれを見送ると残された明りの中にまだ皇子の前に立ちふさがるお蝶を見やりますお蝶は黙ってかぶりを振りました腰高へもたれ加減に打ち砕かれた皇子へこう手を張った格好は敷いたげられた美女が自分の恋人を背後にかっているようで妙に劇的な悩ましさと気高さがありましたそこどかぬか平田優の調子には気を張った時に出てくる一周職業的な圧力があります蒼太を始めその手下と人足人数にして 67有人もあろうと思うのが会場開花から集まってバラバラと表へ問いだした様子物をひしから追い落とすば000に1つも逃しっこはありませんえいどるか平は焦ってお蝶のキシな肩へ左手をかけました右手には抜き身を持ちそばめたまま娘の体を近づくでそこから引き剥がすとしましたが何をするんですれた肩をひょいと前へやって相手の手を外したお蝶は肩を引くと元の皇子の前に持たれて冷たい瞳に少し憲兵ずくな平田優を見上げました何な何をなさるんです夜中に若い女の前入ってえそれにはな獣みたいなものほ呼びたりしてホブのくせに恥ずかしいとは思いません

か少しわなく唇を噛むと生きた気の緩みで信じのような涙が長いまつ毛を洗って美しい頬を濡らします5おお嬢様とんでもないことを驚いたのは番頭の五兵でした大田の1人娘で世の中の事情を知らないにしてもカソにも八丁堀の旦那州町人にとっては個人様より恐ろしいよりに真光から盾をつくという話はありませんほっておいておくれおは剣もほろに押し立てようとする兵を月のけました嬢様そんなことおっしゃっちゃバチが当たります道中一通りならぬお世話をいただく小木の旦那とんでもないごは踏みはけた根巻きの前を合わせることさえ忘れてできることなら飛びついて娘の唇興奮に痙攣する赤い唇を手のひらで塞いでやりたいような心持ちになるのでしたいくら8丁ぼりの旦那方でも罪もともない女の寝部屋へ抜刀で押し込んでもいいという法はないそれにそれに自分 1人の手にはまるにしてもあんな汚い人間を60人も70人も呼びいれてさお蝶のまつ毛にはきりと涙が光りますがそれはさっきの苦の残りでしょうもう泣きもどうもしていないことはその冷たい調子にもはっきりわかります小平太は一言も口を聞きません一等を手早くさやに収めていてつきそうな神から襟の水を無さに多元で拭き取ったまま明りを背にして破れた生子の外をじっ見据えていんのでした中世なんかにならなくたっていいよどうせ京都までは引本道だものお蝶の下は劇場に煽られて思いの他が辛辣に動きました貴重者の下町娘が木一杯のふに駆られて芝居毛を存分に発揮させたとしたら下物で鳴らした小兵だ優もまるっきりぶないことを悟らないわけにはいきませんそれに後ろからは奥目があけに取られた口を開いて見上げ横合いはおれんが少し皮肉な微小さえ称えてクイルに眺めていのですこれだけ見物が揃ってはうっかり札を切れないことは物慣れた兵だには分かりすぎるほど分かっているのでした親元でも度でもない人は私の部屋に何がいようと構わないはずじゃないのねへ男がいようと猫の子がいようと本当にせかじゃないの様口が過ぎます語弊は全く気がきじゃありませんでしたこの娘の気象をよく知っているだけにこの上激発して引っ込みがつかなくなるの何より恐れたのですひえほっておいておくれ私言うだけのことを言ってそれで悪ければどんな古成敗でも受けるからお嬢様どうぞお願いですから黙ってくださいね兵お前は道中旦那のお世話になるって言うけれど神奈川で浪人者

が長持ちを2つまで割ったのに小の旦那は黙って見ていなすったじゃないの千松のような弱いものへ抜き身で切りかけるくらいならどうしてあの浪人もを切ってくださらなかったろ私にはさっぱりわからないよねご兵旦那へ聞いておくれ面と向っては言いませんがすっかり転倒してしまった兵に向かって言うだけにその皮肉の効果は2倍にも3倍にも働きかけますコルギ平田優はさすがに顔色も変えませんが濁り切ったビューの間には何とも言えない稲妻がさっと走るの隠し用はありませんでしたお嬢様そんなことをおっしゃるものじゃございません恋着の旦那にも深い4関内がございましょうさあこうしているとだんだん寒くなりますこちらへいらっしゃいまし俺は見かねた様子でそっと滑り出ると優しくお蝶の方へ手を置いて女同士らしくその怒りに震えた横顔の美しさを差しのきました6北条様小の旦那は女の御用で京都へいらっしゃるのこちらからお願い申し上げ同中お世を焼いているのでございますつまらないことをおっしゃるものじゃございません兵はれんの助け船に力を得て小平優の顔色を見横合いから声をかけました年配にも知恵にも不足のない白ネズミですがお蝶の調子の激しさにすっかり転倒してしまってこれだけ言うのが精一杯だったのですお蝶はしかし軽蔑しきった目で平打優の様子を見ておりました言うだけのことを言ってしまった後の不思議な不安に苛まれながらも久しの外にいるはずの千松の身の上が気にかかるのでしょうねお嬢さんあっちへ参りましょう私の部屋には気のける人間もおりませんし女は女同士お話を受けたればまた及ばずながらお力になる工夫もございましょう俺もそう言って姉らしく娘の顔を差しのきますがお蝶は少し固くに頭を振って容易に破れた光子から目を移そうともしません平田優の態度はその間にも寸の破れを見せませんでした冷たい水を誰の仕業か分かりませんが頭から浴びせられもジクや二十歳の小娘に罵倒されても顔色1つ買える様子もなくその冷たい目は相変わらず千松の後ろ姿を皇子の外の闇に追っているだけですバワクランドが名指しで売り出した添役の値打ちはこういうところにあったのでしょう少しばかり濁りきったのが生ぜで泥水も皮肉も平を激発しないばかりでなくこんな時に予想されるわざとらしい憲兵ずな態度も屈な皮的な様子も示しはしません

ただ渾身職業意識で練り固めた人のように破れた皇子の外へ見えるか月の熊の中に立ち手先と人足と宿のものへ声をかけるのでしたどんなこちらへは見えません下からこういうのはもなく御用聞きの蒼太の声ですそこより他に行道はない物の影をよく見るのだぞそれが不思議で旦那円の下にも兵の鍵にも隠れる場所はございません果て元へ戻るようなことはありませんでしょうなそんなことはありようはずはないそれよりお前が外へ回る前に飛び降りて逃げはせぬか平太優の顔は次第に破れた光子から窓の外へ乗り出しますそんな気遣いはございません久しの下は袋路地で平までは 6尺以上間がありますそれに平にはご覧の通り忍び返しが打ってありますから羽でもなきゃ一気にびこぜはしませんほ平田はますます乗り出しましたその袖の下からは差しのくもう1つの顔白い額と匂う肌と静かな息遣いと感じただけでそれはおれんということは分かりますが先ほどの行為にむくゆるつもりともなく平田優はとがめそびれてなすがままに黙っております路地はくなく探したであろうなと平台それはもうだなここにさえすればあり匹逃すこっちゃございませんきは現にしまっております内から開けた様子はないな内からも外からも触った様子もございませんそれではやはり久しの裏か戸袋の影だ俺が行って追い落としてやる飛び降りたら容赦なく切り捨てるのだぞへい平田は左の親指に一旦納めたたちの鯉口を切って破れた光子から一歩闇のひしに足を踏みおろしました 7小平田優は何の躊躇もなくそのまま久しの上に降り立ちましたあ追いすがるようにおちさすがに待ってくれとは言いませんが続いて甲子の外へ危ない格好に白いハを踏み出そうとしたのですそれを見るとお嬢様大丈夫でございます少もご心配なさることはありませんとレ寄り添うように娘の耳へ囁くのでしたえお蝶は振り返ってみましたがおれんは身を返すと一人の分封を残して早くも廊下の闇に消えこんだ様子後には番頭の五兵が事件の大げさな発展に気を奪われたかこれも冷たい畳の上に罠なく奥目を据えて何やらくどくどと愚痴を言っているだけですお蝶は何がし一旦踏み出した足を元の畳に戻しました双子とみこ囁いたまま飛び去ったおれんの言葉が妙に自信に満ちて久しの闇にいる千松がもう確実に救われたにそういないといった妙な希望が胸の中に湧いてくるのでし

たとにかくあの不思議な女は自分たちの上に絡む運命の糸を操っていそうで平打優の後を追って久しの闇などをうろつくよりはおれんの後から飛んでいってこの大芝の楽屋裏から見ている方がよほど賢いような気がしてならなかったのですお蝶は中知らない娘ですそのまま開けっぱなしの廊下へ一文字に出そうとするとお嬢様どこへ行きなさる番頭の五平は早くも見てとってその行手に立ちふさがりました通しておれいえいえどこへいらっしゃるか分からないうちは滅多にお通しはできません兵は少し片になっていたずらっ子見たように大げさにぼの形になるのでしたどいておくれもうお前の言うことなどは聞かないから下唇を噛むと美しい顔からさっと血の気が失せました激しい怒りが骨に染むようにお蝶の身内にうくのでしょうお嬢様どこへいらっしゃるおつもりでございます奥目は少し転倒してお蝶の袖にすがりついたままわらわと震えております激動に継ぐ激動でこの気の良い下女はすっかり面食らってしまったのでしょうお話を含めもうお前の言うことも聞いてやらないからほれ蝶様邪険に振り払うお蝶の袖でひしひしとしがみついて奥目はもうボロボロと泣いておりますお前はバカだよもう一緒になんか来ることはないからこっから江戸へ帰っておくれれ女様10連もおそばにいた私が今更どこへ行けるものでしょうそうしらすにどこまでもお連れくださいまし補助様お願いでございます身ばかりの絶になるのをお蝶は迷惑そうに顔を背けてひたすらに謎の言葉を残して去ったの後暗い廊下の彼方をじっと見やるのでしたちょうどその時久しの上と下とは血に植えたよきと御ききがいちのように潜り込んだ男を舐めるように探し回っております旦那見えませんかと下から蒼太の声いないと上からは小平だ少し味ながら狩が追い詰めたうさぎをヤの中に探すような残虐な期待と冷たい好奇心が下の先に匂います窓の下や屋根裏にはいないトの影はご覧になりましたがいない平田優の声には分かりきったことをといったようなほかな怒りがあります8 千松は一体どこへ行ったのでしょうかいっって簡単でしたあまり簡単すぎて小ゆ平田ほどのものも気がつかなかったのですがれんは皇子からちょいと外を覗いてみた

だけで一切の事情を読んでしまったのですそれはこうでした久しへ抜けた千松が無意識にたどったのは左手いくつ目かの窓兵の部屋とと大南の窓を起こすとその先が廊下の明り取りでそれから先は3弱のトを回ってレの止まっている表2階の欄間になります戸袋のところから欄間の下まで一見ばかりは久しが尽きて千松でなくとも飛びつけそうもありませんここまで来ると千松はがっかりして立ち読みました飛び降りると下は袋そのはものすごい忍び返しを打った兵で蒼太の言うではありませんが羽でもなければ飛び越すことは思いもよらなかったのです千松はがっかりして引き返そうとしましたしかしこの時はもう蒼太の一体ははしご団を飛び降りて路地の中へ殺し上には小平湯一等の鯉口を切って甲子から外を物色しております引き返すことも飛び降りることもなりませんがそうかと言って五福太物屋の手代が尺余りの中を飛んで戸袋からラカへ乗り移ることなどは夢にも及びませんたった1つ運を天に任せてそこから往来へ飛び降りる道はありますがこれもしかし千松にとっては命がけの仕事でした常ありある階の袋から踏ん張る力もなく下へ降りたとしたら袋の下まで来ている忍び返しに身を裂かれないまでもどぶを踏みて目を回すか乾き切った東海道に尻餅をついて腰を抜かすくらいのことが生ぜでしょうどんなに気に励みがあっても千松はやはり人使いでも軽でもありませんそんなこと通してまごまごしているうちに家の中から人が出てくれば足腰のたのうちに切られるか縛られるかとにかく無事で逃げせることなどは思いもよりません千松は観念の歩を固めました死ぬ気になると全身を走った不quiteない震えも止まり必死の窮地に追い込まれながら心持ちだけは水のごとくさえ帰ります久しをまっすぐに引き返して何の悪びれたる色もなくお蝶の見る前で小平田優に切られてやろうそういった不思議な衝動が臆病な千松の胸に目指したのはこの時ですかつては自分を軽蔑しきって虫ケラのように捨てたお蝶今ではまた情熱が蘇って一緒に逃げようとまでしておりますがいつどんなことで自分に背を見せたくなるかもわからないお蝶ですその動きやすい娘心に一生忘れることのできない記憶の楽音を押すためにはその見る前で何の恐るる色もなく鼻歌を歌いながら微傷さえ含んで一等の元に切られて死ぬに越したことはありません実際お蝶にとって何ほどの魅力になるか

分かりませんがとにかく千松は自分の死を恐れる心持ちから出発してお蝶の目の前で皇子とひしを明けに染めることを考えるとすっかりその計画に通水しきって骨を追って逃げようと言った最初の心持ちを失ってしまったのでしたいや骨を追って逃げ押せる手数と忍耐とこれから先の長い旅路をお蝶の後を追っていく真空艱難の圧迫に耐切れなくなったのかもわかりません塩物は臆病らしい思い切りようで高結心をすると骨を追って回りかけた戸袋を逆にたどって元きた久しへ取って返そうとしましたと後ろで静かにと開く音振り返ると残間から誰やら顔を隠してこちらをえているものがあります9天が開いて人の姿がほかに現れましたが外もうも真っ暗で男とも女とも分かりませんどうかしたらそれは2階に残った手先の1人かもしれないと思った千松はそのまま背を見せて小平の刃の下へ帰ろうとしましたっこいもっと後ろから押しつぶしたような塩から越え言うまでもなくそれはセシの吉田です塩松はほんのしばらくためらいましたそっちへ行っちゃ助かりこねここへ思い切って飛びつくんだと吉座段階から手を伸ばして千代松の飛んで来るのを待ち構えます千松は決しかねる様子で戸袋からラカまでの間尺ばかりの闇の縁を見つめ恐ろしいことはねえ思い切ってどいついてみねえ器用に受けてみせるぜそう言いながら吉は長い触角のような手をラカの外の闇にうようよと動かすのです千松は黙って頭を振りました闇の縁を吉の手へ飛びつくなということがご服屋の手代不にできるはずもなく満一やりそこねてどいたの上で王城でもするようなことになればせっかくお蝶の目の前で切られて死のうと言った劇的な目論みが不になってしまいますしようがねえな吉は下打ちを1つ人当たりその辺りを見渡しましたこの男は闇の中でも犬のように目の聞くことはいも書いた通りで千松が袋にしがみついて片に頭を振るのを見ると元より小平田優に切られて死のうというみがあるとは知よしもありませんただ生まれつきの臆病で自分の手へ飛びつくほどの気力もないと思ったのでしょうしのねえ野郎だなもう1つ噛んで吐き出すように言って癒しめきった一別をくれしかしこの手代を助けて最後まで道具に使うよにと言ったおれんの言葉を思い出すとそのまま見捨てて雨を閉めるわけにもいきません待て待て塩のねやろだが見殺しにすると後で姉がうるさいういよいよ先番に1番の兼ね合いだ見るが

いい吉田は欄間の上に馬乗りになるとそのガニ股の足を釘抜きのように曲げて足の甲と足の甲をしっかり絡みつま先を半分開けた天戸のかにかけましたと上半身は欄間の外へ物理学を無視した格好に伸びてその巨人無比な長い手がゴリラのようにぬ闇を張って松が必死としがみつく戸袋の方へ行ったのですあとほの2尺ほどで潮祭の体に手が触れるでしょうそうこれならどんな野郎でも怖いことはあるねえ思いっきり飛びついていきな吉さの声がつい腰の辺りで聞こえると清松はぞっと背筋に寒気を走らせました好んで切られたいわけではありませんがこの怪物の触覚のようにくじらな長い手に比べると平田優の刃の方がどんなに親しみ多い存在だったでしょう何を考えて来ないか野郎末はもう一度後ろを振り返りました月の熊になった戸袋の影と言ってもこれだけの騒ぎを小平がいつまで悟らないはずはありませんくもみ3元を立ってきらりと輝く刃久しを渡ってさっと踊りかかる平の姿を見ると臆病な本能にられたように千松の体は前後の考えもなく闇にうめく吉の手へ飛びついたのです10 おおチマは思わず悲鳴を上げてしまいました6尺も飛ぶつもりで戸袋を離れましたが何分踏ん張り力のない足場で実際は3弱をも飛べはしません闇の中にほく差し出した吉の手を守よく掴みて体はっこのように大地へと思ったのも一瞬でした観念の目を閉じる暇もなく上から襟首をむずと嗜みの悪い猫のこのようにつみあげられて南関越しに天戸の中へそっと置かれたのですいそや天元寺の配置で小の針に足を絡んで裏切り者の牛を老に叩きつけたです段階から体を伸ばして中に浮いた千松の襟首を掴むくらいのことは大して骨の折れる系統でもなかったのでしょう吉さの腕の力はそれほど人間離れがしておりました後から中松に肉迫した小木兵畳みかけて人たちと思いましたが久しが尽きて戸袋の向こう側までは手が伸びませんくも待て存分に驚異的なのを浴びせながら自分も足がかりのない戸袋を回ってからくも向こう側へ顔を出すとお尺ばかり減ったラカのうへなんとも得体の知れぬくもが消えこんで続いて飛びつこうとする平優の前へびしりと天が邪険な音を立てて締め切られたのでしたその中に隠れたのは塩であったかそれとも欄間から覗いてみていた他の人間が遠閉ざしたのかその辺りの様子は平優にも

分かりませんとにかくここまで追い詰めるとどんな良い狩でも諦めるより他には手がなかったのでしたくもは家の中だ表にを探せ小平は久しに帰るとその時まで路にめく一体の人数へ声をかけました旦那見つかりましたかと下からは待ち構えていたような蒼太の声手袋から表2階の欄間に飛びついて天の中へ入った出口出口を固めて後の人数は家の中を探せおお蒼太は手下のものをまとめて家の中へ取って返した様子はそのままを伝わって元の甲子の破れにたどり着きましたご兵へえあの女はどうしたつい今し方までその辺りにいたレをさして言うのでしょうどこかへ参りました自分の部屋へ引き取ったのじゃございませんかそうか行って見てまいりましょうかいや拙者が行くお蝶を逃すなへくとか言ったなお前にも頼んだぞ今度蝶を逃すとお前の命はないものと思えへえ奥目は打ちれたように18巻の大日階を主人のキシな体に寄り添いますお蝶の黒い瞳は避難に燃えて憲兵ずな侵入者を見上げましたこの木ぐいの高い娘から見ればよりでも八丁堀の旦那州でもむやみに人を戸人扱いにするのが我慢のできない冒涜だったのでしょう平田は言葉せわしくこれだけのことを言うと通りのようにお蝶の部屋を通り抜けて表2階の方へ廊下をたどりました次は五平の部屋その次はオナンそれから十文字になった廊下を減って右手がの部屋で突き当たりは表に階の天戸それを開けると全国戸袋の影から見た欄間になります雨戸は3も鍵もかかってはおりません多分戦国くもがこっから紛れ込んだままになっているのでしょう小平台は立ち止まって思わず腕をこきました 11廊下は表2階の雨戸に突き当たってラカ好きの縁が左右に伸びておりますがそこへ隠れた証拠は何にもありませんいや明るい時丁寧に見て回ったら汚れた足跡ぐらいは探せないこともなかったでしょうが成分とっさの場合薄ぐらい有明の光では元よりそんなものを見つけられる通りはあり試案に余るともなく腕をこまいた小平太優の後ろへどんなどこにも見えませんよ2階中畳をあげないばかりに探したんですが御用聞きの蒼がディスみたいな感じのする敏章そうな顔を出すのでした

うん確かに2階でしょうな旦那それは間違いはない戸袋からこの欄間に飛びついて通しめたのこの目で見たんだからええすると雨を開けて中から引き入れたものがあるわけですね戸袋からラカ屋は6尺もありますから浜が閉まっていちゃ飛びつけ通りはありませんそうかもしれない何分暗いのと足場が広く悪いのでその辺りのことははっきりわからぬがしたえとりはしませんでしょうね旦那そんなことはないが表に人を置かなかったというのかいや最初のちは23人見張らせておきましたが2階へ入ったという旦那の声を聞いてみんな一緒に家の中へ飛び込んでしまいましたするとくもはやはりこの辺りにいるわけだなええまず袖で蒼太はまんまるな目をくるくるさせて左右の部屋から廊下の進み部屋の熊などを見回しておりましたがいきなり横へ出ると自分の影が生じへ刺さぬような位置を取って左手の部屋を一気にさっと開けました中は空っぽうん小平台湯は遠い明りにすかして唸っております蒼太はずかずかと入って遠慮釈もなく押入れから袋戸棚の中を見ましたがあるものはせいぜい夜のものくらい酔いから入った様子は少しもありません旦那は残るのは向こう側の部屋だけになりました踏み込んでみましょうか蒼太はたった1つ残る俺の部屋の所持へ身をしばせる形に近づきました待て待てえいそこには客がいるようだ一応亭主か番頭を呼んで掛け合いさせなければなるまいれんの部屋と知るや知らずや兵はさすがに客のある部屋へ真中すの侵入を食べないいますしません話は面倒になったらちょいとお役目を拝借してあこれこれれそんな無法なことはならんぞ亭主を呼べたな向こう向いて目をつぶっていらっしゃいまし私が開けるもんにはこうことはありません蒼太は江戸の御用聞きとして兵ずには慣れておりました平打優のためらうのをめんどくさそうに生子に手をかけて一気に開けようとするとその生子が中から開いて後ろ手に閉めながら蒼太の前へすらりと立ったのは言までもなく先ほどまでお蝶の部屋にいたおれんの美しい姿だったのですほとく蒼太の顔へ冷たい一別を浴びせてお前さんは随分乱暴な人ね高がはの商事でも私にとっては浄覚さそれに江戸ではどんな役目の方か知らないがここは大久保様の浄化で支配違いさ高らかに笑って長板の上に羽織った

ドテラの襟を書きあわせました12 大勢の古文を操って滅多に人に見せのおれんがこうクズを取ってよりやおかっ壁に姿を見せるのはよよのことと思わなければなりませんここはお前の部屋か小木平湯は少し照れ隠しもあったでしょうまともにありけを浴びたオレの美食の前にこんな分かりきったことを言っておりますなんなお察しの通り私の部屋にそういございませんがあの男はいないのかとおっしゃると皇子から抜け出した手代だいえ俺の顔は申し分もなくほがらかですがあまりタパすぎて疑えば疑えないこともありません確かにこの2階へ入ったがこの部屋より他に隠れるところはないぞまあいるならいるでいいお前をとめもどうもしないただあの男を引き渡してもらいたいのだああどうだこの部屋にさえすれば黙ってかまう私ではございません先ほどお嬢さんの部屋にあの男が飛び込んで夜逃げの相談をしているのをお教え申し上げたのはこの私ではございませんかそれはそのとりだ改めて霊を言うがおれんは少しはすっぱにけれども存分にあやかににっこりしましたより木の小平優が心のつもりでしょうちょいと顎を引いた形が攻略な女足にはたまらなく面白かったのですところが表にの欄間から入った者はどこへ行ったかこの廊下で消えてなくなったのだ言葉でございますが旦那あの男は惨めな様子で酒の辺りへ差しかかったのをかわいそうに思って連れてまっただけで私とは何のエコもございません女の1人旅そうでなくてさえ心細いことだらけなのに旦那のような方に睨まれてまでよそのお嬢さんをそそのかすような大それた男を囲うわけがございましょうかそれは理屈だとにかくこの部屋の中を見せてもらおうか平だ言ももう一歩も引きません後ろにはおかっぴの相オレの強烈が少し苦々しいと思ったのでしょう手癖引いて飛び込む用意をしておりますお安い御と申し上げたいところですが取り乱した女の寝部屋を殿方に見ていただくのがどうも気になってなりませんそんなことならそうは2人の様子をしりめに立ち上がって正直に手をかけましたこうなればもううずくでもと思う様子がつな目にもはっきり読めますあれ親分まだ話が決まらないじゃないの部屋をお目にかけるのは構わないがその代わり私の方にも頼み

がある聞いてくださるだろうね蒼太の手をそっと押さえてしたたるようなさやき目は斜めに平田優の笛容量な顔を追いますなんだ頼みというのはとそうた今も申し上げた通り私は母親の行家を訪ねての1人旅江戸を出てから色々道連れもこえましたがどれもこれも物騒で気が許せませんできない相談かは存じませんが旦那や親分のよう方のおをして今日なり大阪なりご都合のいいとこまで行けたらどんなに気楽でしょう決してご迷惑はかけませんが旦那様一緒に連れてやってはくださいませんか俺はとうとう本音を吐きました蒼太の固くな手をぐいっと引くとそれを柔らかい手に揉み込むように一方は娘のようなおどおどし目つきで平優の少し苦れきった顔を見上げるのでしたグミのような赤い唇が少し歪んでそれが動くと次には鳴き声が漏れそうでもありまた思いもやらぬ強制がこぼれそうでもあり何とも言えない悩ましい顔になります 13手っ取り早く言えばの望みというのはこの部屋の中を見たかったら京都まで一緒に伴っていけということになりますそんな馬鹿なこと蒼太は剣もほろに決めつけますが小平優は妙に心を光る様子でれんの顔ひたるばかりの美食をことを新しくじっと見つめるのでした旦那女は女同士私にお任せくださればお嬢さんを京都まで無事に送り届けてお目にかけましょうそう申しては何ですがあの下女では若い物の心持ちを見抜いて先手を打つことなどは思いもよりません江は素直に頷きました俺に言われるまでもなく奥という女はどこまで信用していいのかえだ優にも大きな不安があったのですね旦那私の身元については念のため供のものなり宿のものなり宿れの福山で会ってお聞きくださいまし血の繋がりはございませんが亭主の全米は私のお自分で子供の時から可いがられて育ちました私は江戸町で生まれて山一という品川の酒屋へ嫁入りましたがとのりいがしく髪型にいるはずの母親を訪ねて女の1人旅に出たものでございます名前はせ年はいくつに見えますかしら俺れはこんなことを言ってこる兵田優と蒼太え当分に爽やかな笑顔を見せます宿れの服屋というのは戦国吉里と千松とオレンと3人落ち合った茶亭主の全米はおれんの叔父でも何でもあるわけはないのですからいずれ立ちに不騒な茶代を置いて

満一の場合に身元を引き受け人に立ってもらう約束がしてあったのでしょうれんはそれくらいの用意なしに仕事に取りかかるような女ではなかったのですおせさんとやらそれほど潔白な口を聞くなら部屋を見せても差し使いはあるまいいずれになるならぬはそれからの話だとそうたこれは俺におらしいものを感じていないだけに言うことに遠慮はありませんさあさあどうぞおれんは思いの他気軽に身を開いて少しきな臭い顔をする蒼太を導き入れました食事を開けると何の変哲もない八条ひとこは3つ敷きっぱなしになっておりますがありけのつかない光に照らされながら八条の部屋の中には物の隠れる熊もありませんこの通り2人とも逃げてしまいました女だてらに道中で連れをこらえたのが大きな間違いでございました牙にも爪にもかけられなかったのがまだ下の幸せもうもうお役人かお大名でなければ道連れはごめをこることにいたしましょうまたしても軽やかな教習酒屋の嫁にしては少しやめきますが千松を追うことに熱心な小平田優と蒼太はそれを怪しいと思う様子もありませんどの蒼太どうして逃げたんでしょう蒼太は霊のふだや押入れに首を突っ込みましたがそんなところにいるくらいならレんはこんな調子に物を言わなかったでしょうなんでもありやしませんよ旦那が久から戻った時ちょうど私がまだお嬢さんの部屋にいるうちに2人は欄間から表へ降りたのでしょうもう1人の男はそれくらいのことをやりかねない人想でございましたその時表口にいた古文州は旦那のお声を聞いて運悪く家の中へ飛び込んだのでですえ今頃はもう1人も落ち延びたことでしょう諦めなすった方がよろしくございましょう親方俺んはそう言いながら縁側の雨戸を1 枚引いて地が日本の体力で逃げをせた足場平用に刺すのでした

1.愛憎篇朗読まとめは、こちらです。https://youtu.be/_YfIe1PZpCk

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昭和27年作品に、大河内傳次郎主演で映画化された同名映画の原作！
　時は幕末、黒船が来航した、安政五年から物語は始まります。時の老中堀田備中守は、「日米通商修好条約」締結のため、京の都へ三万両をおくる。
　主人公の馬場蔵人は、倒幕派の武士、三万両を狙う怪盗たちとたたかいながら、一路京都をめざします。
　東海道を舞台に上を下への大騒動が実に面白い。お聴きください。

三万両五十三次は、一年半の連載（1932年3月から 1933年8月にかけて）をおえると、中央公論社から函入り上製本上下巻（湊書房版は全５巻、中公文庫版の全４巻版もある）で刊行されました。昭和９年のことです。ちなみに銭形平次の連載は、昭和七年にはじまり、当時務めていた報知新聞に長篇の連載を依頼されました。

■登場人物
馬場蔵人……本編の主人公。四十二三才。
小百合……父山際山左衛門を上意討ちされたため、蔵人を仇とねらう
茜の半蔵……山際家の老僕。小百合を助ける金五郎の父。
南郷小源太……真四角虎ひげ
矢柄城之助……色白の美男
真琴……矢柄の妹
伝次……小源太家来。岡っ引きだが、渡り中間に変装。異名は二面
作良軍之進……倒幕の志士
進藤晋……倒幕の志士
今宮八郎……倒幕の志士
お蓮……伝次に姉御と呼ばれる。謎の女性。陽炎のお蓮。殺人を好む。

牛若の金五郎……泥棒の親分だが、殺しを厭う
ノッポ竹……お蓮に惚れている
藤次……猩猩、四十六七になる、小頭格
丑松……奉行所の手先
吉三……背虫、ながら、夜目も利くゴリラのごとき長い腕と怪力を誇る
小動平太夫……与力
堀田正睦……幕府閣老
植松求馬……家老
文治……金五の子分
お蝶……和泉屋の令嬢
千代松……和泉屋の遠縁。手代。
五兵衞……和泉屋番頭
本庄左次郎……蔵人の添え役
桃々斎桃吉……講釈師の小僧

■用語集
飛白……カスリ・かすったようにところどころに小さな模様を出した織物。またその模様。
権助……ゴンスケ・江戸時代の下男に多い名であったところから。下男、飯たき男。
洗足盥……センソクタライ・よごれた足を洗うのに用いるたらい。
九つ……子の刻、十二時
科人……トガニン・罪を犯した人。罪人。
蓮っ葉……ハスッパ・女の態度や行いが軽はずみで下品なこと。浮気で品行のよくないこと。そういう女。

■2.情炎篇　目次
0:00　蘇る情炎　１
4:46　蘇る情炎　２
9:36　蘇る情炎　３
14:18　蘇る情炎　４
19:05　蘇る情炎　５
24:02　蘇る情炎　６
28:56　蘇る情炎　７
33:36　蘇る情炎　８
38:59　蘇る情炎　９

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