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Announcer 女子アナ美人

【朗読】「市井小説 短編」貧しさや虐げられた者たちが様々な感情を抱え、懸命に生きていく姿に思わず胸が熱くなる! “市井もの” の秀編。【時代小説・歴史小説/山本周五郎】



【朗読】「市井小説 短編」貧しさや虐げられた者たちが様々な感情を抱え、懸命に生きていく姿に思わず胸が熱くなる! “市井もの” の秀編。【時代小説・歴史小説/山本周五郎】

[音楽] 今回は山本小五郎の姿勢小説の探偵を朗読 し ます エジは小梅河原町のうへ帰ってくるとなか ばかり寝たままで動かなかった母親の愚も 黙って好きなようにさせておい た長屋はもちろんくじだと呼ばれている この一体の裏ではほとんどみんながエジの ことを知っていてそれでもいわの気持ち からその話に触れるものは1人もなかっ たオは食事に気をつけ た60日の間にエジはかなり痩せてもも こじんまりした顔立ちが骨だって見え肌の 色も青白く乾いたように艶を失ってい たオは魚や卵自念子ノ頭 食べさせようとし た初めからではない初めの2日ばかりは 柔らかいタパな食事を与えそれから順に 需要のあるものに変えていったのである 英二は少年自分から脂っこいものをすか なかったし今でも好きな方ではない母親が 拝むように言うのでやなく箸をつつけるが あんまり濃厚なものだとそを向いたお願い だよエデと愚は愛願するよに言う体にせの つくまでだからね薬を飲むつもりで食べて おくれすると彼は黙ったまま一橋か2橋 つまんで噛まずに飲み込むのであっ た落川はエジの帰った日の夕方に訪ねてき たが愚と戸口で話したままエジには会わず に帰っていっ た3目に来た時愚がエジに言うと彼は会い たくないとのではやはり会わずに帰っ たその時おと入れ違いに女の客があって おくと半時何か話していった低い ささやき声で何を話しているのか分から なかったが時々女客が忍びなきをするのを 英二はこっちの部屋で聞いてい た女客は帰る時によろしくお願いいたし ますと言ったが丸みのあるいい声であった 五はその客については何も言わなかったし 英治も聞きもしなかっ たテさんの声がしないようだなとあるよ エジが言っ たてさんの声も神さんの声もしないようだ がなお隣は変わったんだよと愚が言ったて さんは長場の都合で下屋の方へ越していっ たよそれから向こうの兵さんも引っ越し ちまって兵さんのうちはまだ空屋になっ てるよ エジは溜まって頷い た少し外へ出てみないかいと愚が言った寝 てばかりいると気がククしちまうじゃない か少しは外の風に当たってくる方がいいよ エジはうんと言っ

た言おうと思ってたんだけれどねとオは 恐る恐る言っ た強制の旦那からお金ををいいてあるんだ よ金だってとエデは母親を見 たお前が怒るかもしれないと思ったけれど ねうちもすっからかんだったし旦那この金 はエジの稼いだものだっておっしゃるもん だ から分かったよとエジは顔を背け たお前怒ったのかいと愚は息子の顔を覗い た悪かったら堪忍しておくれ多分怒る だろうと思ったんだけれどねどうにもしよ がなかったもんだ からいいよ怒ってはしないよと顔を背けた ままエジが言ったどっちにしろ同じことさ 取っておいていいんだ よオはこっくりをしたようやく心の重荷が 降りたというよう に彼女はそれが受け取ってはならない金で あり受け取れば息子が二重に傷つくという ことを知っていた今息子の言ったことは 母親思いの優しい気持ちから出たので本心 でないことは察しがついたけれどもオは いかにも女らしくその言葉を鵜呑みにして 心の重荷を下ろし たオは紙包を出してきて広げ教や生兵から 受け取った金額を言いそれから使って残っ た分をそこへ並べ たエジは見ようともせずに分かったよと 頷き持っていておくれと言っ た鉄道夫婦の後へ越してきた隣は男の 1人暮らしらしく昼頃に起きて出かけ夜は 遅くそれも半でも押すように必ず酔って 帰った出かける時はこちらの戸口へ寄って 頼みますと声をかけていくただ一言頼み ますというだけでその声は低く力がなく何 かはじているような響きが感じられた帰っ た時は声もかけ ないと開けたてが精一杯のようでドタドタ 音がしたかと思うと寝てしまう時には ブツブツ1人で何か言ったり怒鳴り声を あげることもあるし悪夢にでもうされる ような不気味な唸り声が聞こえたりし た隣の人はおけなんだよとあるよオがエジ に行った今は浪人しておいでだけれどそれ には置のなことがあってね本当に沖のくな 事情があるんだ よエジは俺よりもかいと聞き返したかった しかし聞き返しはしないで黙って壁を 見つめてい た英二が起き出しまで強制の方からは誰も 来なかっ たいそその方がいいや張も禁止もさばだと エジは思っ たもうさらばだ2度と手にするもんか

縁切りだと彼は心の中で呟い た10月になったある日英二は釣り道具を 出して調べたああそれがいいねと愚は言っ た中堀で棚は釣れるそうだよ用なものが あったら買ってくるから言っておいでな エジは医よなものを言った手癖は使えるが 針はみんな錆びているしハリスがダメに なってい たおろはすぐ買に出かけようとしふと 振り返ってちいちゃんが来たいって言うん だけどねと息子を見 たいつかねとエジは顔を背け たもう少し立って から愚はため息ををつきそして出ていっ たエジが出かけたのは午後2時頃であった 空は薄曇りだったが風のない温かな日で 下森川の騎士にもだいぶ釣っている人が 見え た中堀は横川から中川へ行く途中にあり 周りは見渡す限り田畑や荒れ地続きでとど に森や雑木林に囲まれた農家が見えその 向こうに遠くつばさんが眺め たエジが中堀へ曲がっていくとそこにもう 竿を下ろしているものが1人いたジは ちょっと気が重くなり釣り道具を置いた まま枯れ草の上に腰を下ろし長いこと ぼんやりとあの森を眺めていたそれは堀の 対岸の一丁ばかり向こうで小高い塚のよう な丘に松林が茂っており何かの小さな祠が あった今その松林市の中に紅した木が2さ あって黒ずんだ松の間に木や大々色の すでにまばらになった歯が鮮やかに 浮き上がって見え たかなり時が経ってから先に来ていた男が こちらを見た英二と同年輩らしいが知ら ない顔だっ た田子ですかとエジが聞いたなと男は苦笑 したなんてことはない釣れるものを釣る だけさないとエジも微傷し た男の苦笑する顔を見た時エジはその男が 好きになったごく稀にではあるが顔を見た だけで初対面にも関わらず古い馴染みの ような行為を感じることがあるその時エジ は64日も惨めな屈辱と孤独の日夜を経験 した後だったので特に感じ方が強かったの かもしれないがそれでもなおその感じに 謝りはなかっ た2度目にこの中りであった時2人は 名乗りあっ た男はカンと呼んでくれと言ったどんな字 だと聞くと盛の勘だと答えた2人は気象が あったどちらも口数が少ないしよもない ことを聞いたり話したりするようなことは なかった 3度5度と会い一緒に中りで釣りをし

ながらほとんど話らしい話をしないしかも それがお互いの気に入っているようである し黙っていても意志はよく通じ合うようで あっ た釣りの下手なことも2人はよく似ていた 下手というよりも剣気がないという風で 特に男の方は少し大きなものが釣れたり するとひどく戸惑ってどうしたらいいかと でも言いたそうにエジを見るのであった Aさんは1人っこだなとある日男が言っ たそうじゃないの かうんとエジは頷いたそうだろうと思っ たま抜けて見えるかエジは彼を見た男は 黙って目をそばめながらあの森を眺めやっ たエジは男から目をそらし竿をげ別の方へ 糸を入れ た かさんとしばらくしてエジが言ったおめえ 釣った魚をどう する男は56丁も離れていてようやくエジ の声が聞こえたという頃 にAさんはどうすると反問し た俺かとエジは苦した俺はまだどうすると いうほどつったはない やご動揺だと男が言ったエジはなるほどと 言っ た大抵の場合男の方が先に来た帰るのは エジの方が早かった男は先に来て同じ場で 動かずに釣り帰る時はいつもエジの後に 残ったエジがお袋が待ってるんでねなどと 言い道具を片付けて別れを告げしばらく 歩いてから振り返ると薄暗くなり始めた 蟹田の向こうに釣り竿を持って身をかめて いる男の後ろ姿が枯草の間に小さくポツン と 見える夕風が渡り茶色に枯れた足や荒れ地 の草が乾いた音を立てて揺れそして男の 後ろ姿はいつまでもじっと動か ないエジはため息をつき首を振って堀端の 道を帰るのであった 10月も終わりかけたある日男はエジに 向かって酒はだめかと聞いたエジは 釣り上げた船をビへ入れその手を水で洗っ てから少しくらいなら飲むと答えたじゃあ と男が言った帰りにやらない か今日かああと男が頷いた いや か何かわけでもあるの かないこともないと男は笑ったおかしそう に笑ってエジを見ていっ た俺たちは隣同士だエジは不審そうな目を した56日前に路地で見かけたんだと男は 笑い顔のまま言った俺はこの9月の初めに Aさんの北隣へ越してきたんだ へえとAが言っ

たまさかねおくさんには随分厄介になった よまさかねへえとエジは首を振っ たまさかそうとは知らなかった なあそして急に彼は黙ったエジが急に黙っ たのを男はすぐに感づいたそればかりでは ないエジがなぜ沈黙したかという理由も 分かったのだろう男は気まずそうに頭を 垂れ た男の浮がピクピクと動きその周りに波紋 が立った食ってるでかさんとエジが言った 男が竿をあげるとその辺りで柳はという 小さな細い魚が糸の先で勢いよく跳ね ながら連れてきたまたこいつかと男は言っ た私は牢へ行ってきたとエジが言っ たその話はかさんも聞いたと思うが住んだ ことは よそ聞いてもらいたいん だエジは言っ たこれまで誰に話すつもりもなかったおふ だって詳しいことは知らないだろうその方 がいいんだ がかさんにはすっかり話して分かって もらいたいん だ男は針に絵をつけ堀の淀へ意を垂れ ながら黙って頷い た私はぬREM屋の職人だったと英二は 話しだし た12の年に日本橋の通り2丁目にある 京也生兵という店方向に入ったそこに丸 12年いたわけなんだがかさんも知っての 通り日野と羊のおフれで贅沢がご禁止に なりぬ泊なんぞも無論に行けないことに なっ た昨年の8月だった なそれから今年の3月にまた出たんだと エジは続け た分かってるだろうがどこにだって裏が ある制は泊が専業で食も123元あったお フれの通り手を止めていれば店と下食とで 50人近い家族が上人をしなければなら ないおまけにおかしなもので金持ちなんず は合金銭になると余計そいつが欲しくなる らしこれは禁止だと言われる品は表向きに は姿を消すが裏では盛に売りされるし値段 も高くなるばかりだっ たどんなに危ない橋でも家族を食べさせる ためにはそれを渡るよりしょうがない強制 でも注文に応じて仕事をし たそれがバレたの か うんとエジは目を伏せ たどう言ったらいいかバレるとは誰も思わ なかったらしいどこでもやってることなん だからまたバレてもお叱れぐらいで住むと 思ってたんだろそいつが京橋の田村という

袋物屋が捕まって口を割ったためににと 差しが来てしまっ たよしこしと男が言っ たとめを受けるのは主人じゃないの かエジは首を振っ た彼はためらい言い淀み男を見て声を 落とし た私は言い含められたとエジは言っ たの主人に罪を着てくれと言われ たお前が罪を背負ってくれれば自分は手を 回して軽く済むように本する必ずそうする から家族を抱えた下職たちのためにほんの 一時目を積ってくれそう頼まれて私は承知 し たエジの浮がくいっと沈ん だ 浮はクイっと沈んでツンツンと水面で踊り 次に水の下へ斜めに引き込まれた細い竿の 先端がわずかにしなって水中へ伸びた糸が 輪を描いたがまもなく浮はポカッと水面に 現れそして何事もなかったように動かなく なっ た私 は1人で罪を着 た仕置きは入2年ということだったが 約束通り強制の主人が本訴してくれたん だろう6順地でローから出ることができた でそれはいいんだご金星に触れたことも 事実だしみんなの罪を背負ったのも承知の 上だそれいいん だけれども私はとエジはどっ た私はお知らす で武行所の知らす で いやどう言っていいかわから ない私にはあのことを口でこうと話すこと ができそうも ない男は黙っていた今は静かに浮いている エジの浮きを眺めながら黙ってエジの 続けるのを待っ たエジは義象のことを語ったシラスでさき のあった時今夜生兵始め店のものもも食 たちも全てエジのやったことで自分たちは 何も知らないといいその証拠をあげ た無論前に口を合わせておいたことだこれ はこうこれは近々と細かいところまで 打ち合わせがしてあったみんなはその通り に証言したんだ悪意で私を落とし入れた ものなどは1人もない何もかも予定通りに 運んだんだしかしとエジは唇をかみに寒 さんにでも襲われたようにその肩をすめ た私はみんなの証言を聞いてるうちに吐き たいような気持ちになっ た1人1人が真面目な顔でありもしない ことをすらすらと述べたてる声の調子も

かやしないそれが義象だと分かってるのに そんな煙りは味人も感じられないんだそれ はそのはずなんだそうでなければなら なかったんだ しかし私は言いよのないほど胸がむかつい てきた他にどう言いよもないただもう胸が むかついて吐きたくなってたまらなかった という他は ない男はかかに頷いたエジは目をつって頭 を垂れ長いことじっと考え込んでい ただめだなとエジはやがて顔をあげ たもっと言いたいことがあるんだ吐きたい 気持ちなんてもんじゃないもっと大事な ことで胸が使えてるんだがどう言ったら いいか私には分からない や口で言うことはない さと男がゆっくり言っ た俺にはおよそ検討がつく よそうだろう か つまりいややまよそと男は竿をあげていっ たそれよりそう今日はもう飲むことに しようじゃない か嫌な話を聞かせて悪かっ た俺にはもっと嫌な話がある よもうしまって飲むことにしない かそそうしようとエジは頷い た道具をまめて立ち上がった時男の右足が びっこであるのをエジは初めて発見し たそれで歩くところを見せなかったのかと エジは思っ た中堀では男はいつも先に来ていたし帰る 時も必ず後に残った多分不自由な足を見 られたくなかったからだろうと英二は推察 し た中野号の横川に面した街角に魚義という 縄野連の飲み屋があった男はいつもそこで 食事をし酒を飲んでいる らしいジスという主人女房のおよしそして 2人いる高女たちも男をよく知っていたし 扱いにも親切とわりが感じられ たその日は母親に断ってなかったので夕飯 に間に合うようにエジは早く切り上げ たそして家へ帰ってみると女の客が来て 母親と話していた 女は何度色のちりめんのおこづきをかぶっ ていたしエジはそのまま隣の6畳へ入った ので顔形もよくは見なかったが肩の小さな ほっそりした体つきでしかし両手を膝に 重ねてきちんと座った姿には一種の 慎ましい気品が備わってい たいつか来たことのある女だなエジはそう 思った彼女はまもなく帰っていったが母親 と話してたさき声も帰る時にではよろしく お願いいたしますと言った丸みのある綺麗

な言葉つきもかなりはっきり記憶に残って い た食事の時にエジは誰だいと母親に聞いた オはちょっと知ってる人だよと言ったまま あまり話したくない様子なのでエジも さりげなく隣のかさんと知り合いになった よと話をそらした隣とは知らずに一月近く も一緒に釣りをしていて今日初めて名乗り 合い酒を馳走されてきたと語った呑気な もんだねとおくは驚きながら笑ったもも ここでは会ったことがないし内田さんは 出かけてばかりいたからね東大と買っても は暗いとも言うからエジは笑った何が おかしいのさとオが言った笑い事じゃない よエジお前はさんなんて心安く呼んでる ようだけれど内田神助というおけなんだ からねだって老人だろうとエジが言った いつも丸越だし自分じゃもう侍とは思って いないらしいぜそれにしたってかさんは 失礼だ よいいよとエジは言った失礼なら内田さ んって呼ぶことにするよかさんが嫌がら なければ ね之は嫌がっ たの内田さんと呼んだら顔をしかめてよし てくれと首を振っただってお袋に言われた んだまっぴらだとかのすは言ったこれまで 通りかと呼んでくれうちだなんて呼ばれる とぞっとするよわかったそれでよければ そうするよとエジは言っ た雨とか風の強い日を覗いて2人は毎日の に釣りに出かけた中堀から綾瀬川寺島村の 小川時には船で中川へ出ることもあっ た帰りは魚吉によるのが決まりでどうやら 神助はその方が主な目的らしく釣りはその 時刻までの暇つぶしのようであっ たエジはあまり酒が強くないので長くて 一時大抵は半時くらいで先に帰るが之は 残って遅くまで飲み霊によってよけるほど 酔って帰る以前のように怒鳴り声をあげ たりはしないが横になったと思う頃苦し そうな低いうめき声や点々反則するもの音 の聞こえてくることがしばしばあっ た俺にはもっと嫌な話がある神助はいつか そう言ったまた母親からもおのな事情が あると聞いたことがある英二は自分が 身の上を語ったので相手も何か話すだろう と思っていたが之はそんな様子は見せ なかっ た英二は野反の四島に隣の低い梅木を聞き ながらよほど辛いことがあったんだなと 自分に引き比べてそっと吐息をつくので あっ た下月になったあるよ英二は神助と魚吉で 飲んでいたその日2人は珍しい大量で肩の

いい船を合わせて50匹以上も釣りまた 神助は100問目くらいのウも1本あげた そのために仕掛けをダメにしたが神助は おくさんへ土産にしようと言い魚よへ来る とすぐにそれを咲いて白きにするように 頼ん だ2人はいつも釣った魚を魚よしへ渡す ジスはそれを煮たり焼いたりしてくれるの だが魚になるほど量のあった試しがないの でその日の大量にはみんなびっくり 小女の女などは買ってきたんでしょと言っ て2人が釣ったとはどうしても信じなかっ た神助はその日に限ってエジを引き止めた そんなことは初めてでたまには付き合って もいいだろうと言われると断ることができ ず酔いの口まで一緒に飲ん だ金之助はグイグイと煽った顔は少しも 赤くならないがいつまでも平気な顔をして いた しかしやがって酔いが目や言葉つきに現れ 亡が変わってき たふっと気がつくと頬が焦げたようになり 目が落ちこぼんで確かに落ちこぼんだよう に見えた下唇が片方へねじれたその変わり 方があまりに激しくまた突然だったので エジはちょっと寒気立つように思っ たえさんとかすが言った おめえおちさんていう娘をどうするつもり だ英二はドキっとした彼がおちのことなど 知っていようとは思わなかったからで ある之はおふさんから聞いたんだと言っ たおは強制の主婦の名でエジと結婚する内 が決まっていたエジが老へ入る前に出てき たらをさせようお近にはこれこれれの自賛 金をつつけると教の主人夫妻が約束し たAさんのいない間に俺はあの娘を見たと 神助は言った人柄で大人しい娘じゃないか それを訪ねてきてもおめえは愛もしない 知ってる ぞその話はよしてくれかお前はあの娘と 夫婦になるはずだったと神助は続け たおふさんに聞いたんだがあの娘はおめえ と一緒になっておめえに新しい職について もらうつもりでいるそうだ新しい職の用意 もできてるっていうじゃないかその話は 聞きたくないんだ知らすで吐きたくなって から と山之助が言ったおめえは口ではいいよが ないと言ったいいはある さみんなの義象を聞いた時お前は人間に 愛そうつかしたん だみんなが口を揃えて平気で嘘を並べるの を聞いて人間全体がヘドの出るほど いやらしくなったんだそれで落ちかという 娘にも顔を見る気にさえなれないん

だそう だろうエジは返事をしなかったその時店の 中には彼らと離れたところに3人連れの客 が飲んでおりそれが話をやめてこちらの 問答を聞いているようであったそうじゃ ないと言える か之は唇をさらにねじ曲げ た言えない だろうおめえはお知らすから こっちどんな人間も信用できなくなった 自分の他はな自分だけは別さ自分だけ は何の関係もないお近さんにまで愛を つかしても自分だけは別なん だ気なもん さ人の火傷は痛くないかからなとエジは 言った頼むからその話はよしてくれ私もか さんの傷にはさりしないんだ から俺の傷がどうし たってどうもしないよ私は人の傷には触ら ないと言ったんだ俺の傷はどうし たって神助は拳で強く反対を打った おめえ俺のびっこを笑うつもりか誰が そんなこと言った私はただうるせえと神助 はまた反対を叩いたさこが踊り勘どりが 倒れた人なんだと思ってるんだ 帰れエジはカっとなったその時主人のジス が飛んできてAさんと言いエジを立たせて 素早く店の外へ連れ出した帰った方がいい とジが言った酒癖が悪いんでこうなったら 始末に終えないだあは引き受けるから帰っ ておくなさいいつもこんな風なのかいまあ ねと裕介は肩をすめた慣れた連中ばかり ならいいが馴染みのない客がいたりすると 絡み出すんでね私は馴染みのない口かと エジは苦笑したじゃ頼むよそして彼が歩き 出すと後ろからおきというもう1人の小女 が追ってきて降りに入れたものを渡した はいこれとお雪は言ったおばさんにお土産 ですってかさんかええ内田さんが さよならお雪は走って帰っ たあのうだなとエジは呟いたすっかり忘れ ていたの に彼は後ろへ振り返った店へ戻りたくなっ たような目つきをしだがそうはしないで その檻を大事そうに持って内へ帰る 翌日エジは釣りに行かなかった隣の貫之は 夕べも遅く帰りいつもより静かに寝た物音 もさせなかったし独り言を行ったりうめく ようなこともなかったそして朝になると いつもより早く出かけてしまっ たオは白焼きのうをかば焼きにしようかね と言ってせっせとタレなど作って 昼飯が住んでもジが立とうとしないの でかしそうに出かけないのかいと聞いた うんと彼はソポを向いた今日はやめるよ

そしてふいっと母親の方へ振り向い たおは新しい職の用意もしているそう だ夕べ之はそう言った之は随分詳しいこと を知っていてもちろん母親が話したの だろうが新しい職などという党のエジが 聞いたことのない話まで知っていることが 不審に思われたのであっ た一体どういうわけだエジは母親にそう 聞こうとしたすると偶然そこへ近が尋ねて きた戸口で彼女の声がした時英二はあの女 客だなと思ったおこずきをかぶったあの声 の綺麗な女だろうそう思ったがおばさん私 ですという声を聞いておちだということが わかっ たエジは立って帯を締め直したいておくれ とおろが言った今日は行けないよ今日は ちゃんと話すだけ話しておくれもう はっきり決まりをつつける自分だよそして 落ちを迎えに出て行った 上がりがでおろは何か囁きおちをこっちへ よして自分は外へ出ていったちょっと 茶菓子を買ってくると言ったようだがその 前に2人だけで話せと囁いたらしい落川は ご拍子ばかりためらっていてそれから美称 しながらこっちへ入ってき たこぶしましたと落川は明るい調子で言っ たやっとのことで会えたわ嬉しいわ英二は こくんと頷いて顔を背けた落はそれには 気づかない様子で強制の主人夫妻や下職の 人たちがよろしく言っていることそして彼 らの近況などをさりげなく話しながら流の そばへ寄って手まめに茶を入れたりそれを 英二に進めたりし たAさんと押は改まった調で言っ た変なこと聞くようだ けれど私たちの約はダメになってしまった んです かその方がいいじゃないかとエジは顔を 背けたまま答えた約束たって口だけのもの だったし私は老へ行ってきた人間だ牢屋の 飯を食ってきた人間なんだ からそんなことAさんに似合わないわと 落川は言ったそのわけはみんなが知ってる んだしAさんも承知の上のことでしょ今に なってそんな風に言うなんてAさんにも 似合わないことだわみんなが知ってい るってとエジは聞き返し た武行者の役人や世間中のものも本当の訳 を知っているっていうのかいそんな人たち には縁のないことよお前にはそうだろうさ ええそうよあんたにだって縁のないことよ と落川はいし言った一生釣れそうの私です もの無業所の役には世間の人たちが何と 思っていようとと私たちには関係のない ことよそれに人間ってものはいつも本当の

ことを世間に知ってもらうなんてわけには いかないと思う わお前はロへ行ったことがないから なAさんが行けば私も言ったのと同じこと よと落は言った私Aさんの将さんになる つもりでいたんですものAさんが苦しい 辛い思いをしてれば私はaさんよりもっと 苦しい辛い思いをした わやたなんて馬鹿なこと言うのかしらと落 は唇で笑ったその目がみるみる涙になり 彼女は震えながら言ったごめんなさいねA さんの苦労が分かるはずもないのにバカな こと言ってごめんなさいいいよもうこの話 はよそ私はお近さんを責めるつもりはない んだでも私のこと怒ってるんでしょ怒って やしないさとエジはせのない調子で言った おかさん怒るわけはないし誰を怒るわけも ないん だじゃあ話を聞いてちょうだい 落は指で素早く目頭を撫で たAさんが留守の間にオランダ行きの刺繍 を始める支度がしてあったのよ仕事の話 なんか聞いたってしょうもないさでも聞く だけは聞いてよ落は話したエジの今もない という顔を無視して容量よく手短に話し た刺繍は縫い取りにもっと技工を加えた ものでできた品は長崎へ送りオランダ召喚 が買って海外へ売るのだという英二は縫い havをやっていたから道具の日産を 変えれば仕事ができるしその道具も揃えて ある贅沢品ではあるがオランダ召喚へ売る ので女将の許しも得られるうまく行けば 職人を使って大きく商売ができるだろうと 落川行った ねいむことはないのよと落川はエジを見た その気になったら始めてくれればいいの それまでゆっくり休んでいていいのよ私 なんか手にしないでくれとエジはそっけ なく言っ た仕事なんかする気持ちはないしする気に なれそうにも思えないんだからまだ疲れ てるのよ私のことはほっといて くれ疲れているからだはとちはわるように 言った今に疲れが治れば体や気分も良く なってよ私それまで待ってるわ1年でも2 年でも待っていること よエイディは黙っていたブワに黙って やはり顔を背けたままでい た落川は間もなくまた来ますと言って 立ち上がっ たそして戻ってきたオと戸口で出会い何か 囁きあったと思うとすすり泣きの声が 聞こえ た愚が低い声で慰め落はすぐに去っていっ た

らしいエジはため息をつきながら 立ち上がって着替を始めたどうしたのと おろがこっちへ入ってきていったお出かけ かい うんちょっとその辺 まで芝居へ行っておいでな愚が言った一村 座でやってるまかの表現で団十郎が大した 評判だって言う よ芝居かと英二は言っ た芝居なら今ここで見たばかりだオはエジ と言っ たエジは速歩を向き核をキュッキュッと 閉め たそれから5日ばかりエジは釣りに行か なかっ た下月になってからずっといかにも小春と 言いたいような温い穏やかなひり続きだっ たが中旬にかかると伊が強くなり毎朝雪の ように下が降りるし下の道は酔いのうち からガチガチに凍った山之助は相変わらず で釣りに行くのかどうかいつも昼頃に起き て出かけ夜は遅く時には夜半すぎに酔って 帰るそして横になってから独り言を行っ たりうめいたり怒鳴ったりすることにも 変わりはなかっ たあるよ之はこれまでになく泥酔したよう で寝てからも苦しそうにうなりドタバタ するうちに土瓶か何かの壊れる音が聞こえ た悪いよいをしたんだねとおろが 起き上がったちょっと行って見てくるよ エティはうんと言ったオは反転を引っかけ ゆかしに水を入れたのを持って隣へ行った 壁ひえだから話し声はよく聞こえた ちょうど上船寺で4つの金が成りだしエジ はまだそんな時刻なのかと思っ た隣では母親のなめる声がし水を飲ませ たりヤグをかけ直したりしている様子だっ たそのうちに神助が何か言い始め やがておば さん頼む頼むよおばさんと高い声をあげ た一目でい合わせてくれと神助が言った あって話したいことがあるんだ一目でい から合わせてくれこの通りでほんの一目で いいんだ からエジは枕から頭を上げ た母親のなめる声がし之が同じことを 繰り返し たどうしても会たい1度でいいから合わせ てくれと酔ったしたたるい調子で背神続け た母親が承知したものかどうかまもなく 神助は黙り戸開けたてする音がしておお 寒いと言いながら母親が帰ってきたもう下 が降りてるよと愚は言いながら流の火を 書き起こした去年の父のエサはもっと 温かかったが

ね 今の話が聞こえたよと英二は寝たままで 言った合わせてくれって誰に会いたいって 言うんだ一口には言えないよオは日に夜を かけどこの湯を継いだそして引き出しから 戦役の袋を出し夜間の中へ入れて蓋をした エジが小さい自分から冬になるとオは 欠かさずその戦役を 飲む足の先から温まってよく眠れるのだ そうでいのひどい晩などはエジもしばしば 飲むように進められたものであっ た内田さんはレキとしたご家人で工事町に お屋敷があったんだそうだよとオはひに手 をかざしながら言ったそれが去年の春飛ん だ間違いを起こし て女のことなんだけれどねいいなけの人で 10年も前に親同士が約束してあったの 内田さんがそうとは知らず好きになって娘 さんの方でも内田さんでなければって すっかり熱を上げてしまったんだって よおくの話と来るとエジは母親の方へ寝り ながら言っ た一体その娘の言いなけてのはカさんなの かいそれとも別の人かい別の人に決まっ てるじゃないか内田さんと言付けなら何も 騒ぎは怒りゃしないよ 分かったよそれでどうしたんだ邪魔をし ないで聞いておくれと愚は言っ た神助と娘の恋はやがて周囲の者の目に 止まり戦国ばかりの旗本だという娘の父親 が神助のとろへ談判に来たその時初めて娘 に言付けのあることを之は知ったのである が彼は改めて自分の妻にもと頼んだ父親は 承知しなかったし今後2人の会うことを 厳重に禁じて帰ったすると娘が家出をして きその後からイ漬けの男が追ってきたこれ も金之助と同じくらいの身分で年は3つ ばかり上だそうであるがもう逆上したよう になっていて娘が山之助のそばにいるのを 見るといきなり刀を抜いて切りかかっ たふもって言ったそうだよ愚は夜間の戦役 を湯呑みに継ぎ吹きたしながら一口すすっ た内田さんは無事に収めようと思うから 逃げ回りながら詫びを言うんだけれど相手 は点で聞きもしないそのうちに内田さんが 足を切られて縁側から転げ落ちる相手が それをまた切ろうとするその時おけ育ち 偉いもんだね娘さんが後ろからその男を 殴りつけたんだって内田さんの刀を取って ささやのまま頭を力いっぱい殴ったんだっ て よ相手の男は目がくみ庭へ転げ落ちて伸び てしまったそこへ隣屋敷から騒ぎを聞いて 人が駆けつけ男は解放された上その隣屋敷 の人が送り返した人に知られてしまったし

人情という事実があるので到底内妻には ならない娘の父親は相手の男を罪にはでき で発に本した結之は亀つぶしとなり娘は 感動ということになっ た浪人した時はいくらか金もあったが切ら れた足の傷が生んで治療が長引いたために 立ちまち使い果たしてしまい2人はこの 長屋へ越してきた傷は治ったものの筋が どうかしてびっこになり働くこともでき ないせっかく夫婦になったのだがそのまま では2人が上にしてしまう娘は決心をし 自分が稼ぐと言ってどこかへ姿を隠して しまっ たそれから内田さんは飲み始めたよと愚は 続けたお侍は肌つきと言ってどんなに困っ ても一両は持ってるんだってさそのお金で 夜も昼も飲み続け酔っ払って道端へ寝る ようなこともあったよご心臓はそのまんま か内田さんはそう思ってやけになったのさ 私も半分は疑ってたがねと愚は吐息をつい た一つきばかりするとそっと私んとこへ 訪ねてきて一両っていうお金出して私から 内田さんに渡してくれっていうのさ自分は 会いたくないし当分の間は居所も知らせ ないけれども金だけはきっと届けるから あの人の世話を頼むって泣きながら言うん だ よエジはじっと目をつった それ はと彼は低い声で聞いたいつか来たあのお こづきの人だねああやって毎月1度必ず 届けに来るんだ よ何をしてるんだろうさあ ねえオは長の日をうめながら言った何をし ていることやらあの人も言わないし私も 聞きもしないさ 私はあの人が何をしてるかなんて考える気 にもなりゃしない よそれでとエジが言った会いたいっていう のはそのご心臓のことなんだなオはああと 言ったエジは暗い天井を見守ったまま しばらく息を潜めていたがふと母親の方を 見て寝なよと言ったせっかく飲んだ薬が 聞かないなぜあいよと愚は立ち上がっ たさぞたまらねえ気持ちだろう な母親が寝床へ入る気配を聞きながらエジ は心の中でそう思っ たそんなわけだとするとカさんもたまら ない気持ち だろうつれえだろうなどんなに釣れだろう とエジは思っ たどうして合わせないんだエジがしばらく していった合わせてやればいいじゃない かご心臓が開いたがらないんだよだって ここへ来ることは分かってるんだろう

分かってやしないさとおが言ったお金も 使いぬ人が届けてくるっていうことにして あるしねどうしても会うのは嫌だって一体 どうなることかしら ねエジは枕の上で頭をゆっくりと左右に 振っ たその翌日英二は山之助の起きるのを待っ て隣を尋ねた金之助は帯を閉めながら出て きてやあと美笑し た天気がいいんでねとエジが言った釣りに 行こうかと思んだ が神助は戸口から空を覗いた行こと言って 神助は笑ったがしかしこれがいい天気かね エジは空を見上げて鬱陶しく曇っているの に気がつきバが悪そうに苦笑しながらうね と呟いた後で魚よしへ来てくれと神助は 言ったあそこで顔も洗うし道具も預けて あるんだそうかそんなら一緒に行こう私は 出かけるばかりになってるんだとエジは 言ったいいともとかすが言ったいっぱい 引っかけるんだが付き合うかそいつはどう もとエジは首を振った朝だけは苦手だが 待ってるよかすは朝なもんかもう昼だと 言っ たエジは釣り道具を持って神助と一緒に 魚よしへ行った店には早い昼飯を食う客が 45人いて神助に挨拶をするものもあっ た金之助が顔を洗っているうちに小女の遅 が魚と酒の支度をした逆月ではなく大きな 湯呑みで神助はそれへいっぱいに酒を継ぎ 飲もうとしてふと英二 に ありがとうと呟いたエジは不審そうなをし ただがすぐに目をそらして何と呟いた ゲージの方から訪ねたのに対して礼を言っ たのであろうその短い一言には思いがけ ないほどの感動がこもってい た2人は寺島村の小川や沼を釣って回り 夕方にまた魚よしへ寄っ たもう悪字はしないよと之は腰かけるなり 言った俺にに構わず帰りたくなったらいつ でも帰ってくれあそうしようとエジは答え た半時ばかり付き合って英二は先に 切り上げた神助は咲夜のことは何も言わ なかった泥酔していたが忘れたのではない だろうもちろんエジもそのことには全く 触れなかっ たいはひどかったが珍しく雪を見ずに12 月に入っ た風の強い日の他は大抵2人で揃って 出かけ半日釣った後魚よしで飲んで別れた 荒れ地の枯れ草を分けて行きながら山之助 の不自由な歩きぶりを見る時また釣り竿を 並べていて山之助が浮の動くのも知らず 猛然と遠い雲を眺めているのに気づく時

英二は鋭い痛みを感じたように眉をつかめ 慌てて目をそらすのが常であっ た さ辛いだろう なとエジは 思うどうなるん だろういつか夫婦が一緒に暮らせる時が 来るだろう かその時までカさんの辛抱が続くだろう かなどと思いやるのであっ た12月になって間もなく初行が降っ た2人が綾瀬川で釣っている時朝からの 冷たい美風が止むといつかさらさらと みぞれが振り出しそれがやがて粉雪になっ た こいつ竿をしまいながら神助が言った たっぷり振ってくれたっぷり振ってくれれ ば少しはいても緩む だろう乾いてるからふりさえすればつもる なこうなると魚よしはまずいなと之は言っ たよじゃせっかくの雪が見られない牛の 午前へ付き合わないか雪見酒かいいだろう と英二も容気に頷いた私も今日は少し ばかり持ってるんだ神助はその方は大丈夫 だと言った2人は秋葉神社の森を目当てに 粉雪の中を歩き出した牛の午前は向島の包 に接していい門前には掛茶屋が並ん 葛西太郎はその中でも知られた茶屋である が2人は包みに近い方の掛茶屋へ入った 久しく乾いていた上にさらさらした粉雪な ので辺りは立ちまち白くなり暗くなる自分 には2寸ばかり積もっ た掛茶屋は日暮れには店をしまうのだが鼻 の季節や雪などの時には客がある限り商売 をするその日も客がだいぶ来て大底が酒に なったのでくれる前にちをかけつね た2人はすっかり暮れるまで飲み戻りかご を見つけて茶屋を出た山之助は歩い ていこうと言ったが不自由な足では無理 だろうと思い英二は酔ったからと言って 自分で籠を呼んだのであっ たかさんは上しへつつけるんだろういや 今日はよそと山之助は籠の中から答え たいい気持ちによったしこの勢いで積もら れては帰れなく なるそんなならうちへよらないかとエジが 後ろの籠から言ったお袋に何かこられて もらって飲み直してもいいしそれから一緒 に飯を食うとしようかすはああと言っ たかご路地で降りエジが打ちを払って雪を 踏みながら内へ帰っ た戸口で今帰ったよと声をかけ之を助け ながらどへ入ると生子が開いておくと女の 客とがそこにいた女の客はちょうど帰り かけたところらしいおこづきをかぶった

ままそこへ棒立ちになったいけないまずい ことになったとエジが思い愚がエジと言っ ただがその時神助が低い声で鋭くやえと 呼びかけた女は身をし力が抜けたように頭 をれた話があると山之助が言った一緒にお いで五が内田さんと言いかけると女はそれ を遮切ってはいと答えながら皮膚を抱えて どへ降りたエジは体を避けながら神助が 荒い息をしているのを聞い たじゃと神助がエジに言ったまた後で今 火種を持って上がりますと愚が言った火鉢 は終わりでしたねいや火はいりませんと 金之助は外へ出ながら言った話はすぐに 住みますどうか心配しないでください そして妻を促して出て行っ たエジは上がって少女を閉めながら人足 早かったと言った運んだなかさんが珍しく 魚よしへ寄らなかったしかごに乗った なんてのも巡り合わせだ どっちにしろこのままじゃ置けないよと おろは言っ た酒をつけて前後しして2人で食べるよう に持っていってあげようんそいついい 差し向かいで飯でも食えば気分もやかに なるだろえじゃお前酒買ってきてくれああ いいと思う私は先にヒバチを持ってっとく からとオは行ったペジが酒を買ってくる間 にオはヒを入れて持って行き戻ってくると すぐに汁の鍋を仕掛けたりあり合わせの ものをさこに取り分けたりした酒は土瓶で 悲願にしてもらおうと前の上を見ながら おくは言ったうちのとっくりはかけてるし お隣にはゆかしがないんだからいいだろと エジが言ったあ前後は俺が持っていくよ そして2人で酒と食前を運んでいっ た オは夕飯を済ましたそうでエジにどこかで 食べておいでと言ったあったものをみんな 隣へ回したから何も残っていないのだと いうエジはじゃそばでも食べてこようと 言って傘を持って出かけ た下森川の向こうの八県庁に蕎麦屋がある エジはそこへ行ってあつを2つ食べ た雪はまだに降っていて人の踏まない ところはご寸ばかりも積もったように見え た変な巡り合わせだ帰る途中でふとエジが 呟い たかさんとご 心臓俺とおち か似たようにこじれた中のものが隣り合っ て住むなんて妙な話 だ彼のスへどしんと何かぶつかった びっくりしてみると2匹の犬がふざけてい てその1匹が跳ねる表紙にぶつかったので あった雪のために足音がしないから気が

つかなかったのだが2はゆっ煙を上げ夢中 になってふざけながら森川町の方へ 走り去っ た帰ってみるとおろはこたつに入ってくい もをしてい た隣はと目で聞くとオは大丈夫という風に 頷いて見せ たは枕を出してきこたへ入って横になると 読みかけのシャレボンを開い た隣はひっそりとして時々おえする声が 聞こえるがそれもごくカスカだし話し声は ほとんど聞こえなかっ た隣は止まるんじゃないかなと英二が本 から目を離していっ た止まるとすると布団が足りないだろう バカだねとオが言ったご夫婦じゃないか1 組あれば十分だよ作用でござんすかとエジ が言ったお前こそ敷布団を出しておしきな と愚は言ったそうやってちに寝ちまうんだ からそのまま眠ると風を引く よエジはうんと言ったが起きようとはし なかっ た愚の言う通り英二は間もなく眠って しまっ たそれほど長い時間ではなかったろう 何か夢を見ていると思ったら母親にゆり おこされた起きとくれと愚が囁いたお隣の 様子が変なんだよエジは起き上がった酒を つけたのが悪かったかもしれないとおくは さいた内田さんが酔っちまったようで 今し方から急に絡み始めたんだよエジは しっと手を振った之のどなる声がしい ドシンと人の倒れる音がしたどしんどじと 組み打ちでもするような物音ととに来て くださいと女の叫び声が聞こえた隣のおば 様と女が叫んだ早く来てくださいああ どなたが来 てエジは羽を着て裸のまま飛び出し隣の 都子を毛thereforeぬばかりに声 のする部屋へ飛び込んだそこでは金之助が 女を押し出せていて仰向けになった女の裾 が乱れ真っ白な太ももまで荒にして羽 起きよともくのを之はほとんど馬乗りに なり2手に脇差しの抜いたのを持っていた その抜き身がギラッと光るのを見た途端に エジは足がすみ体からすっと力が抜ける ように感じた神助は刀を振り下ろした女は 両手で山之助の腕を払い刀は畳に 突き刺さったその時エジが夢中で 飛びかかり神助の右腕にしがみついた 山之助は案外たいなく前のめりに転倒し エジは懸命に押さえつけた何をするんだカ さんとエジは逆上した声で叫んだ危ない じゃないかよしてくれこんなことして 危ないじゃないか縛ってくださいと女が

言った押さえていてくださいすみませんが 押さえていてください最上は飛び起き様に 叫び駆け込んできたおが畳に突きたって いる刀を取ったエジは力いっぱい 押さえつけ西城はしきを解いて山之助の足 を縛った西城はそうしながら酔っているん です悪酔いをした時はこうするよりしよう がないんですと言い神助に向かっては ごめんなさい堪忍してくださいと泣き ながら行った山之助は抵抗しなかった苦し そうに荒い息をしぐったりと伸びた ままなぜだどうしてだと言っていたすい ませんがどうぞ手をと西城がエジに言った 手も縛りますから酔いの覚めるまではしよ がないんですからオが帯を取って彼女に 渡したそれは門之助の寝巻きの帯らしい エジは門之助の両手を抑え西上はその手を 縛った上余った部分を胴へ巻きつけたどう して死なないんだと神助は言い続けたどう してだ やいなぜ死んでくれないんだ生きていたっ て恥をさらすばかりじゃないか忍して くださいこのままではませんと西尾は 泣きながら言った私のためにあなたを こんなにしてこのままで死ぬのは嫌です 生きていれば恥をさらすばかりだ いいえもう少しの辛抱ですもう少し辛抱し てくださればよせと山之助が遮ったお前が 何をしているか俺は知っているんだいいえ それは違います知っているとやえ俺は知っ ているぞ違いますそれは違い ます西城は神助にしがみつきその胸に顔を 押し付けそうして絞るような声で泣き出し たエジは目を背け立ち上がって母親のそば へ行ったおくは袖で目を押さえてい た俺がカサを引き受けるとエジは母親に 支えたご心臓をうちへ止めることにしよう 愚は頷いたご返さないでくれとエジは名を さいた朝になったら話すことがあるんだ どんなことをしても止めておいて くれオは息子の目をじっと見た分かったよ とオは言った話というのもおよそわかるよ エジは母親を世上犯へ連れて行っ た俺決心した今踏切がついたと彼はさい たこのままでは死にきれないとご心臓の 言うのを聞いて踏切りがついたん だおちさんは待ってる よかさんは足が不十だがあの仕事なら座っ ててできるからなとエジが言っ たご心臓と2人でその気になってくれて もし辛抱してくれればやっていけるように なる俺はさんを解せて見せる よ難しいと思うけど ね粘る さんゆっくり粘って時伏せるさとエジは

言っ た朝になったらよく相談しようご心臓連れ てってくれ愚は頷いて息子を見た6上では まだ西上のおえが聞こえてい た エジとオが言った彼はうんと母親を見 た いいえとオは首を振ったなんでもない よオは素早く目を吹きながら言っ た後でお前の替えまきを持ってくる よ 今回の朗読はいかがでしたかそれではまた 次回お楽しみ [音楽] に [音楽] さ

💬縫箔屋の職人・栄次は、禁制の犯した店の罪を一身にきて自分も納得して入牢したが、
口裏を合わせた偽証が約束通りだったとはいえ、人を信じられなくなる―。

人間ってものは、いつも本当のことを世間に知ってもらうなんて訳にはいかない。
みんなが口を揃えて、平気で嘘を並べるのを聞いて、
人間全体が反吐(へど)の出るほどいやらしくなったんだ。

🔷今回は、山本周五郎 の『📍市井小説 短編(仮)』を朗読します!🔷

【主な登場人物】
栄次 ------ 主人公。縫箔屋の職人。
おろく ----- 栄次の母。
おちか ----- 栄次の勤める「京屋」の主婦の姪。栄次の許婚者。
清兵衛 ----- 縫箔屋「京屋」の主人。
重助 ------ 飲屋「魚芳」の主人。
お芳 ------ 重助の女房。
おそめ ----- 飲屋「魚芳」の小女。
おゆき ----- 飲屋「魚芳」の小女。
内田官之介 --- 栄次の長屋の隣に住む浪人。栄次の釣り仲間。
八重 ------ 官之介の妻。

【用語解説】
👘縫箔(ぬいはく)
衣服などの模様の縫い取りに金糸または銀糸をまじえること。
あるいは、刺繍(ししゅう)をし、金銀の箔を押すこと。
また、そのように装飾された衣。

📌目次
00:00:00『オープニング』
00:00:29『しおり1』
00:09:35『しおり2』
00:18:25『しおり3』
00:27:16『しおり4』
00:35:38『しおり5』
00:43:44『しおり6』
00:51:51『しおり7』
01:00:23『しおり8』
01:08:50『エンディング』

👦🏻山本周五郎(やまもと しゅうごろう, 1903年 – 1967年)
山梨県生れ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む。
1926年『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。
『日本婦道記』が1943年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。
以後、亡くなる直前まで途切れなく傑作を発表し続けた。
人間に対する深い愛と洞察力で多くの読者の支持を得た。
中でも『青べか物語』は著者畢生の名作として名高い。

1920年『廣野の落日』
1934年『明和絵暦』
1938年『風雲海南記(旧題:浪人時代及び武士道春秋)』
1942年『日本婦道記』
1943年『新潮記』
1946年『柳橋物語』
1948年『寝ぼけ署長』
1950年『楽天旅日記』
1951年『山彦乙女』
1951年『火の杯』
1952年『風流太平記』
1953年『栄花物語』
1953-54年,1956年『正雪記』
1954-58年『樅ノ木は残った』
1958年『赤ひげ診療譚』
1959年『天地静大』
1959年『五瓣の椿』
1959年『彦左衛門外記(旧題:ご意見番に候)』
1960年『青べか物語』
1961年『おさん』
1962年『季節のない街』
1963年『さぶ』
1963年『虚空遍歴』
1966年『ながい坂』

【関連ワード】
フィクション, ノンフィクション, 歴史小説, 時代小説, 推理小説, ミステリー, サスペンス, ドラマ, ファンタジー, サイエンスフィクション, SF, ロマンス, 恋愛, 自伝, 伝記, アドベンチャー, 冒険小説, ハードボイルド, エッセイ, 文芸作品, 絵本, ラジオドラマ

【関連リスト】
🖊️山本周五郎
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