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【朗読】 ほうたいさん 【竹書房怪談文庫】



【朗読】 ほうたいさん 【竹書房怪談文庫】

入り口に鍵のかかっていない 倉の中でなぜか上と脱水で衰弱し入院した 友人がいる そんな話を聞かせてくださったのは私の 知人のエースケさん 彼の古い友人である 恭太郎さんが人探しの末に二日間行方不明 になり最後は 衰弱した姿で発見されたという これはその恭太郎さんが病室で英介さんに 語った話である 夜の仕事が長かった京太郎さんどうにも こらえしょうがなく一つの仕事が長続きし ない その日も飲食店の仕事を辞めたばかりで 馴染みの酒場で昼から酒を煽りつつお金が ないのに明日からどうしたものかと店主に 愚痴をこぼしていた しばらく店主相手に管を巻いていると 突然少し 離れた席に座っている男性から声をかけ られた 年の頃は30代半ばだろうか同世代に 見えるがはるかに落ち着いた雰囲気である そして 男性は 飯塚と名乗った後 もしお金に困っているなら 謝礼を出すので妹探しを手伝ってもらえ ないかと持ちかけてきた 事情を聞いてみると 飯塚さんには年の離れた妹がおり早くに 両親を亡くした後は彼が大学を中退して 働き 親代わりでずっと面倒を見てきたという [音楽] 随分苦労したようでだからこそ妹が東京の 大学へ進学を決めた時は本当に嬉しかった 一安心できると思ったのもつかの間 妹はなれない東京の生活に加え 引っ込み思案なので大学でも友人を作る ことができず もう大学を辞めて帰りたいとよく電話して くるようになった 飯塚さんはそんな妹を励ますために 毎日のように電話をしていたのだが ある頃から急に妹の様子が明るくなっ た最初こそ安心したものの人格が一変した かのような態度に 徐々に違和感を覚えるようになってきた 当初 妹は何があったのかをはぐらかしていたが 心配になった飯塚さんがしつこく尋ねると 包帯さんを部屋に祀って毎日 祈っているおかげと言い出した

そして おじさんにもらったとも 飯塚さんには 亡くなった父親の弟つまり 叔父がいるのだがこの 叔父夫婦は非常に変わり者で何やらよく わからない新興宗教のようなものを信仰し ていた 小規模な団体のようでもしかすると 叔父夫婦が教祖のような立場なのかもしれ ない 昔はよく両親の元へ 勧誘やら金の無心で押しかけてきており 幼い飯塚さんの目にも君の悪く映る二人で あった だから両親が亡くなった時何があっても 叔父夫婦にだけは世話になるまいと固く心 に決めて苦労しつつも一人で妹を育ててき たのである 叔父夫婦にはここ数年ずっと連絡を取って いない もちろん妹の東京の新居や連絡先などを 教えたこともない それなのに知らぬうちにこっそり妹へ連絡 を取り 包帯三なる怪しげなものを送りつけ勧誘し ていたわけである 妹に事情を問い詰めたのだが部屋に祀って ある法体さんというご神体に毎日 毎晩手を合わせていることと おかげですっかり現地になったということ 以外全く話の要領を得ない そんな変なものを拝むのはやめたほうが いい おじさん夫婦とは付き合わない方がいい そう強く忠告したのだが やがて妹はすっかり怒り出し お兄ちゃんはもう連絡してこないでと 叫んで電話を切ると 二度と兄からの連絡に 応答しなくなった 結局そのまま妹とは2ヶ月以上連絡が取れ なくなった あまりに心配で様子を確かめるためまさに 今日東京へ出てきたのだが 妹のマンションを訪ねても全く部屋から出 てこない 玄関のドアへ耳を当てると中から物音が するので部屋にはいるようだが インターホンを押してもドアをノックして も無視され続けたそうである どうしたものかと途方に暮れてマンション 近くに見つけた飲み屋へ入り一杯やって心 を落ち着けようとしていたのだが ちょうど

失職した恭太郎さんとこうして居合わせた ので思い切って 妹探しを頼むことにしたというのが事の 次第であっ た依頼内容は簡単である自分の代わりに妹 のマンションへ行き安否を確認してほしい そして可能なら妹をうまく説得して 飯塚さんに引き合わせて欲しいというもの だ 最初は面倒なので断ろうとした京太郎さん だが 謝礼3万円を前払いするので安否だけでも 確認してもらえないかもし2人を引き合わ せることに成功したら謝礼をさらに7万円 追加して 合計10万円払うと言われたので気分が すっかり変わっ た妹探しを引き受けることを伝えると 飯塚さんは大喜びして謝礼の3万円を 前払いしてくれた そして二人は連れ立って店を出るとその まま妹が住むマンションまで歩いて行き 玄関口で互いの携帯電話の番号を交換した 上で 飯塚さんは 近くに泊まれるホテルを探すのでうまく妹 に会えたら連絡してほしいと言い残して その場を去っ [音楽] たただ いざ部屋の前に立つとどうやってドアを 開けさせるのが良いかすっかりわからなく なってしまった [音楽] 宅配便のふりをしようかとも思ったが小 芝居などできない性格であるもう先に前金 はもらってるんだ別に出てこなくても構わ ないと居直ることにして どうもお兄さんに頼まれて様子を見に来 ましたと大声を出しながらインターホンを 何度も押してさらにはどんどんどんどんと 玄関を叩き始めた しばらくそれを続けたが人の出てくる気配 がまるでない ただドアに顔を近づけると中からは ガサガサと動き回る音がする 出てこないだけでどうも部屋にはいるよう だ 開けてくださいお兄さん心配してますよ そう言いながらずっと扉を叩き続けている とやがて 廊下を歩くパタパタという足音が聞こえ次 にカシャンと鍵の開く音がした しばらく待ってみたのだが 玄関を開ける気配がない

仕方がないのでドアノブをガチャリと ひねり 玄関を開けて中を覗き込んだ 玄関口から薄暗い廊下がまっすぐ続いて いるが人影はどこにも見当たらない ごめんくださいと大声を出してみたが やはり返事はない [音楽] 暗がりに目を凝らすと 壁一面に汚れた布が張られている 細長い包帯のような布地が 壁全体に貼り付けられているのだ 脳裏に 包帯さんという言葉がよぎり ぞわっと鳥肌が立っ たこれは思ったよりまずいことになって いるのでは そう感じた京太郎さん 酔いも急に冷めて 廊下の奥へ向かって ごめんくださいお兄さんが心配しているの で来ましたと大きく呼びかけたが 物音一つ聞こえない これを見て 何もなかった 元気そうだったと嘘をつくわけにもいかず 意を決して靴を脱ぐと すみませんお兄さんに頼まれたんです 失礼しますと言いつつ 暗い室内へと足を踏み入れ た廊下は数メートル続いており入り口近く には台所や洗面所トイレや風呂場らしき ドアがある 少し先へ進むと右側そして 突き当りに一つずつ扉がある まずは右の扉を開けるとそこは四畳半ほど の寝室であった ものは少なくベッドと棚があるだけで人の 気配はない 次は 突き当たりの扉を開け たその瞬間 ものすごい 異臭が鼻をついた [音楽] 震える手で電気のスイッチを探し明かりを つけるとそこは六畳ほどのリビングであっ た 床には足の踏み場がないほど物が散乱して おり 壁には廊下と同じく黄ばんで汚れた包帯が 隙間もないほど大量に貼り付けられている 匂いの正体はすぐにわかった 部屋の真ん中に小さな机がありその上には 大きな白い皿が載せられている

その 皿の真ん中にはネズミの死骸がまるで メインディッシュのように載せられていた ご丁寧に 皿の両脇にはナイフとフォークまで添えて ある 食べた形跡はないが死骸は激しい復讐を 放っていた あまりの光景に思わず悲鳴をあげたがすぐ に我に返り急いで部屋を見渡し たおかしい どこにも人の姿がない 散らかっているとは言っても 六条程度の一室である 隠れるような場所も見当たらないでも 先ほどは明らかに室内に人の気配がし た何より 玄関の鍵が開いた音を聞いている誰もい ないはずはない 何度室内を見渡してもやはり人のいる様子 がない 先ほどの寝室かあるいは洗面所にでも隠れ ているのだろうか そう思いリビングを出ようとした時 背後でパチンと音がして電気が消えた 驚いて振り向いたが 暗い部屋には誰の姿もない [音楽] 途端に恐怖が膨れ上がり 我慢できずにうわっと声を上げて転げ出る ようにして妹宅から飛び出した 自宅のアパートへ逃げるように帰宅すると 部屋には半同棲している恋人の身内さんが いて キッチンで料理を作っていた ウミウチさんは彼の顔を見ると 今夜はきょうちゃんの大好きなシチューだ よと言ってにっこりと微笑んでくれた やっと一心落ち着いて安心した京太郎さん シチューを混ぜる彼女に 今日やばいことがあってと起きたことを順 に話し た美内さんはうんうんと鍋を回しながら 優しく聞いてくれる やがてシチューが出来上がり食卓を囲む頃 ようやく彼の話が終わるとそれまで穏やか に聞いていたみゆきさんが急に と笑い出し た恭太郎さんの目の前では 恋人が狂ったように大笑いし続けている やがて笑いながら あんたが変な話ばっかりするからこんな もん出てきたじゃないと言ってシチューの 入った皿からべっちょりと汁で濡れた紐の ようなものをフォークでつまみ上げそれを

ビシャッと京太郎さんの前に投げつけてき た [音楽] 黄ばんだ 包帯の切れ端であった [音楽] そして美内さんは急に笑い止むと 唖然としている恭太郎さんへ向かって 何じろじろ見てるんだよこの野郎と怒鳴り 両手で机をバンと激しく叩いたそして 机を蹴り飛ばすように立ち上がると寝室に している奥の部屋に行きピシャッと襖を 閉めてしまった あまりのことに驚きながらも 恭太郎さんは後を追って寝室の襖を開け たところが 部屋の中に身内さんの姿がない おい美樹と叫びまくりながら狭いアパート の中を探し回ったが 恋人の姿は煙のように消えていた パニックになって部屋を飛び出した京太郎 さん アパートの階段へ腰を下ろすと 外の空気を吸いながらなんとか心を 落ち着けようとしたのだが あもう帰ってたんだ今夜は大好きな シチューだよ そう言いながら美内さんがアパートの階段 を上ってくるではないか 恭太郎さんは混乱する頭を整理できない まま 頼むお願いだから今日は一人にしてくれと 懇願し 何それ帰れとかひどくないと怒って 立ち去る恋人の後ろ姿を見送りながら 一連の出来事は何だったんだとその場に 呆然と立ち尽くしてしまった [音楽] しばらくぼんやりしていると 携帯電話が鳴っていることに気づいた 出ると飯塚さんで どうして何時間も連絡してくれないんです かと強い口調で責められた 京太郎さんは比例を詫びつつ 怪異の部分は覗きながら妹卓の様子を伝え かなり 良くない状況にあるのではと話すと 飯塚さんは実は僕も見たんですと言ってき た どうやら 京太郎さんからの連絡がないので不安に なり 改めて妹の家へ行ってみると 玄関のドアが半開きになっている 心配になり部屋へ上がったところ

京太郎さんと同じく 包帯だらけの壁やネズミの死骸を見て これは本格的に妹がおかしくなってしまっ たと確信した そして 飯塚さんが数年ぶりに教え電話をすると 案の定妹はオジー夫婦の家に滞在しており 現在は精神を高める修行をしているという 飯塚さんが 妹を返せと怒鳴っても 叔父は平然とした口調で 自分の意志でいるのだから 返せも何もないだろう 心配なら 迎えに来ればいい と言ったそうである そして飯塚さんは 明日は 叔父夫婦の家へ妹を迎えに行くつもりです ただ彼らは自宅で怪しげな宗教をやって いるので 妹を巡ってトラブルになるかもしれません 同行者に男性がいてくれると助かるので私 と一緒に行ってくれませんか と頼んでき たこれまでの出来事で十分に恐怖を感じて いる恭太郎さんはもう関わりたくないと 断ったが 妹に無事やって連れ帰ることができたらお 約束の7万円をお支払いしますよ と飯塚さんが報酬をちらつかせてくる やがて 説得されるうちに それだけのお金があれば今月の家賃が 支払えるし仕事をクビになった自分には 大金だという思いが強くなり 結局 断りきれずに翌日の動向を引き受けて しまった その夜は不安であまり寝付けなかったのだ がようやく 眠気が襲ってきた朝9時 飯塚さんが約束通り車でアパートの前に 現れた 京太郎さんが精神的な疲労と眠気で ぼんやりとしたまま車に乗り込むとそれを 察したのか 目的地まで5時間以上かかるので後部座席 でゆっくり眠ってくださいと言われた 飯塚さんが言うには 叔父夫婦の家は 静岡県の山間部の奥地にあるそうでかなり 集落から離れた場所に住んでいるという 時間が相当にかかる道に迷うかもしれない と言われたので

恭太郎さんは運転を彼に任せ着くまで 寝かせてもらうことにした [音楽] ただ 眠る前にふと思い至り事の顛末を簡単に まとめて頼れる友人宛に連絡しておくこと にした [音楽] 山奥の宗教施設であるたとえ男二人で行っ ても何があるかわからない もし 危険な目にあったらという恐怖が込み上げ て 眠い目をこすりながらも もし明日になっても連絡がなかったら トラブルに巻き込まれたと思って通報して ほしいというメールを 友達の英介さんにだけ送っておいたそして 飯塚さんから聞いた目的地の住所やもしも の時のために同行する飯塚さんの使命も 伝えておいた そこまで済ませると今度こそ恭太郎さんは 吸い込まれるように 眠りについた 目が覚めた時 窓の外はすでに夕暮れの赤で染まっていた 昨晩眠れなかったからだろう ぐっすりと7時間以上も眠ってしまった ようである 周囲を見るといつの間にか地理生い茂る 山道を進んでいる そして 飯塚さんが長時間の運転に疲れた顔で 少し道に迷って時間が遅くなりましたもう すぐ着きますよと声をかけてきた しばらく山道を行くと道が行き止まりに なったどうもこの先はしばらく徒歩らしい [音楽] 完全に舗装の途切れた参道を10分ほど 歩くと 木々の間に大きな倉が見えてきた そして 蔵の前に立つとここですと飯塚さんが言う とはいえ家ではないただの蔵である [音楽] 驚いていると 叔父夫婦は変人ですから と 飯塚さんは嫌そうな声で呟い たインターホンなどあるわけもない 飯塚さんがどんどんと 鞍の入り口を叩き続けるとしばらくして蔵 の大きな鉄の扉が ジジイと開かれた 蔵の中はまともに電池が通っていないのか

相当に暗い 部屋の奥で蝋燭の明かりが揺れているのが わかる そして入り口には 薄汚れた白装束を着た初老の男女が立って いたこの二人が 叔父夫婦なのだろう 細い目で無表情に見つめてくる顔も不気味 だが何より 首や手首など 装束の開いた箇所から体に巻きつけた包帯 が覗いているのが君悪く いったいこの人たちが何の信仰を持って いるのかすら想像できない 飯塚さんが 妹はどこですかと強く迫ると 叔父は 奥にいるまあ入れと低い声で唸るように 言っ た恐れを聞いた飯塚さんはオジ夫婦を 押しのけるようにして蔵の中へ入っていく 紹介もない恭太郎さんに対して叔父は誰と 尋ねることもなく あんたも入れとまた唸るように言ってきた 全く倉に入りたくないがどんどん日が 落ちる中一人で外にいるのも心細い 仕方なく京太郎さんは 案内されるがまま鉄の扉をくぐり 倉の中へと入って行っ たきちんとした電柱などはかけられてい ない 蔵の壁に開けられた 窓代わりの通気口からわずかな外の光が 入るだけで あとは所々に置かれた小さな 伝統が暗闇に浮かぶように点在している ただ 蔵の真ん中だけは何本もの蝋燭の明かりで 孝行と照らされておりそこには見るからに 手作りという小さな机ほどの祭壇らしき ものが置かれていた 近づくとそれは中途半端に折れた木材や 大小様々な金属片 服の切れ端や 包帯を縫い合わせた布などで作られており その 適当さがむしろ禍々しさを引き立てている その祭壇の奥に白装束を着てやはり 首や手に包帯を巻いた若い女性が座ってい た 飯塚さんと言い争っているところを見ると これが妹なのだろう 一際大きな声で 私帰らないからと叫んだ 飯塚さんは妹へ詰め寄って

何があっても連れて帰るこっちは男が二人 だから力ずくでも連れて行くと何度も 繰り返す 妹はやがて抵抗を諦めたのか [音楽] 分かったよお兄ちゃんと帰るといい でも 夕方のお参りが終わるまで待ってと続け たすると横から現れた叔父も そうしなさい 夕方のお参りは済ませていきなさい と妹へ火星を始めた そして 人の上に勝手に上がり込んでいるんだ君 たちも今だけは我々のやり方に従って一緒 にお参りをしなさい と厳しい口調で迫ってくる すぐにでも帰りたい京太郎さんはすがる ように飯塚さんを見たのだが彼はそれを 無視するように いいでしょうでは私たちもお参りに参加し ますと言い出し た祭壇の前に叔父と叔母が座るとその後ろ に妹が一人で座り 京太郎さんと飯塚さんは妹の後ろへ並んで 座らされた そうして始まったお参りという名の儀式は 叔父が 野太い声で唸り横に座った叔母は無言の まま 木片や陶器を金属棒でポクポクチンチンと 叩き続けるというものだっ た何がありがたいのやら 妹はその後ろで一心に手を合わせて祈って いる 横目に見ると飯塚さんまで手を合わせ目を 閉じて真剣な表情を浮かべている 馬鹿げた光景のはずなのだが 暗闇の中 ろうそくに照らされた祭壇の前で行われる と震えるほど恐ろしく 京太郎さんは早く 終わってくれと心の中で願い続けた しばらくすると 叔母がすっと席を立ち 祭壇横の暗がりへ消えていった 10秒ほどして戻ってきた叔母の両手には 大きな 皿が握られていた その皿には大きなネズミの死骸が載せられ ている そして 死骸の皿を祭壇に捧げるように置くと今度 は両手にろうそくを持ちその炎で死骸の 表面を

ジュージューと焼き始めた 一気に獣の焼ける嫌な匂いがあたりに 立ち込めるもはや 恭太郎さんはあまりの気持ち悪さに卒倒し そうになってきた もう無理だもう限界だ そう思った時ポケットで携帯電話が プルルルと震え たこっそり見ると朝メールを送った友人 から返信が来ている ただその勝ち方が妙である 出だしから お前何かの懺悔のつもりかと 怒り口調で始まっているのだ [音楽] 友人からの返信はようやくするとこうだ お前 何かの懺悔のつもりが [音楽] 飯塚君だろ 覚えてるよ小中学校はずっと同級生だった じゃないか お前ずっと飯塚君のこといじめてたよな 彼はひどいアトピーだったからよく包帯を 巻いて学校に来ていたけれどそれをバカに して 包帯やろうミイラやろうと呼びながら 殴ったり包帯を破ったりアトピーを 紙やすりでこすったりやりたい放題だった よな 可愛い妹さんがいてお兄ちゃんに懐いてて さだからお前わざと妹の前でいじめて二人 を泣かせたりしてただろう そのうち周りも引いてきてやりすぎだよと 止めるようになったらお前変にムキになっ てさますます飯塚君にひどいことをし続け て 結局最後には彼の口に死んだネズミを 突っ込んで大問題になったじゃないか そのことを今更俺に向かって懺悔してるの か 彼の名前を今頃出して 包帯や妹やネズミの変な作り話をして 一体お前は何が言いたいんだ そんな内容が 友人から長文のメールで届いていた 読み終えた京太郎さんはフラットめまいを 覚えた そうだった なぜ忘れていたのだろう [音楽] 飯塚君いじめ彼の妹 包帯 暴力ネズミの死骸 突然蘇った記憶に衝撃を受けていると横に

いる飯塚さんが どうしたんですか と間延びした笑いを含んだ声で話しかけて きた そして 顔色が悪いですよ 大丈夫ですか [音楽] と言いながら来ている長袖シャツの腕を まくり上げていく 腕には ぐるぐると包帯が巻かれていたその 包帯をさすりながらにっこりと微笑みかけ てくる 気づくとさらに乗ったネズミの死骸を持っ た叔母が目の前に立っていた ずっと無言だった叔母は どうぞと一言冷たく言うとそのまま 皿を床に落ちずずっと 恭太郎さんの方へネズミを押し付けてくる 膠着したまま動けない恭太郎さんの腕を 飯塚さんの包帯を舞いたてがグッと掴んだ そして ほら食べなよ 君 こういうの大好きでしょと 耳元で囁い た途端にろうそくの明かりはふっと かき消え辺りは一瞬で闇に包まれた その後のことは分かっていない [音楽] 恭太郎さんは2日後に 蔵の中で危険な脱水状態で発見された メールを受け取った友人の英介さんは 妙なメールに返信をした後を一向に彼から 連絡がないので不安になり 恋人の身内さんへ連絡を取ったすると 身内さんも連絡がつかず困っているという 2日間音信不通が続き 万一のことがあってはいけないと思い メールに書かれた場所を警察へ伝え捜索を 依頼すると 果たして山奥の使われていない倉の中で 衰弱しきった恭太郎さんが見つかった 当然事件性も疑われたが 倉の中に積もった埃には彼の足跡しか 見当たらなかったこと体に一切暴力の形跡 がないこと 蔵の鍵は開いており出入りが自由だった ことから 一種の錯乱状態にあった恭太郎さんが事故 を引き起こしたという結論に収まっ た何より 京太郎さんは警察の長所に対して 蔵の明かりが消えるまでのことはスラスラ

と話すのだが 真っ暗になった後に何があったのかなぜ2 日間蔵の中にいたのか その間のことは一切話さないのである 話さないというか 質問がそこに及ぶと急に表情が消えまるで 人形のように無反応になってしまう [音楽] 警察も困惑して結局それ以上 追求することができなかった [音楽] もちろん 警察は話に出てきた飯塚さんにも連絡した そうである 静岡県在住の同姓同名 元同級生の飯塚さんは 昔は恭太郎さんにずいぶんとひどいことさ れたのは確かであることただ高校生になっ てからは一度も会っていないこと 妹とは今でも一緒に住んでおり東京の大学 などには行っていないことましてや 妹探しなどを人に頼んではいないこと そんな話を警察にしたという そうして最終的には事件性なしということ で落ち着いたようである 私に話を聞かせてくれた友人の英介さんも 不審な事が多いので彼なりに調べたそうだ が何が起きたのか全くわからなかった 恭太郎さんには何度話を聞いても真っ暗に なるところで話が必ず途切れて最後まで何 を聞いても答えてくれなかったそうである そんなわけでこれ以上のことは僕も何も わからないんです ええすけさんはそう言って話を終えた 恭太郎さんは精神的ショックが大きかった のか 退院後もぼんやりすることが多くまともに 働くこともできなくなり最終的には実家の 両親が九州の故郷へ連れ帰ってしまった 恋人ともうまくいかなかったようで美内 さんとも別れたそうだ ただ最後に栄介さんは 関係があるのかはわからないのですがと 前置きをしつつ 事件から1年経った頃 元彼女の身内さんから 結婚式の招待状が届きました 結婚相手の名前を見て驚きましたよ あのー 飯塚さんがお相手だったんです 何か 薄気味悪くて結婚式にはいきませんでした 今改めて思い返すと 想像以上に恐ろしいことが起きていたので は

時々そんな気持ちにもなるんです そう話を締めくくると 彼は嫌そうな顔でため息をついた

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書籍名:高崎怪談会 東国百鬼譚 https://kyofu.takeshobo.co.jp/book/9784801921856/
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#怪談 #怖い話 #朗読 #作業用BGM

16 Comments

  1. スゴいお話でした😱
    さすが夜馬裕さん…
    語り口調も素晴らしかったです❗
    暗闇の中で何があったのか気になります😱

  2. イジメへの最高の復讐。電気が消えてネズミ食べたのかな?結婚後少しずつ食事の中にネズミが😱

  3. 昨日といい今日といい程よい長さでとても面白いそして怖いじゃないか
    これからもこういうのをやってくれ

  4. 再投稿なのですが…
    このお話は心に響くものがあり、自分なりに考えてみました…
    以下はネタバレもあるのでお気をつけ下さい。長文になります🙇

    キョウタロウは自分が犯したイジメをずっと心の中に封印していた。あまりにも酷いものだったので思い出すことさえしなかった。
    心の闇はどんどん膨れ上がっていった。

    友人からのメールで全てを思い出し封印が解かれた。
    「懺悔」…
    忘れていた記憶…というか忘れたかった記憶は全て蘇った。

    イジメをする人間はいじめたことを忘れてしまうが、いじめられた人間は決して忘れない。
    しかし、いじめた人間も本当は憶えているのだ。でもそれを封印し、忘れることにより自分を守ってきたのだ。
    たぶんキョウタロウは長年に渡りその闇を封印してきたのだろう。
    封印が解けた時、自分がやってしまったこと、それがどれほど非情なことだったか思い知らされたのだろう。

    イイヅカ氏は何も手を下してはいない。
    キョウタロウは自ら招いた自らの闇の中に入ってしまった。
    ただひとつ救われるのは、キョウタロウはその闇から抜け出せた。全部理解したから。
    ま…この先は「懺悔」に苦しまれると思うが…

  5. 面白かったです、最初パナウェーブの話かなと思ったけど人に酷い事すればそれが帰って来ると言うことか。ただセッティングが大掛かりだからAスケさん以外は本当に新興宗教のメンバーだったかも

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