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【朗読】林芙美子「寿司」  朗読・あべよしみ



【朗読】林芙美子「寿司」  朗読・あべよしみ

林文子 作 寿司 1電気をつけたのと末吉が飛び起きたのと 一緒だったわあっと怒鳴るような大きな声 を立てて起き上がると末吉はCをじっと 見つめて いる鈴子はびっくりしてしまってま驚いた 疑していらした のそう言ってとぼけたような末吉の姿を見 ていると急におかしくなってきて鈴子は クスクス笑い出し た不に電気をつつけるんだものなんだと 思っ ただって私だってまさかあなたがそこに いるとは思わない ものああ驚い た戦争の夢を見ていたんだ よ通りでなんだか今の香ったら怖い顔だっ た わ風呂から戻ってきた鈴子は金だを畳の上 において兄弟を電気の下へ持ってくると鏡 の上をふっと口で吹いてちり紙で鏡の表を 丁寧に吹い たお腹が空いたでしょういや別にすかない なんだか朝から晩まで食べてばかりいる ようだなそうでも随分いろんなもの食べた いって言ってたじゃないの うんもう欲しくなくなった のあんまり一時だからぼんやりしているん だそうでも何でも召し上がるようになった わ ね末吉は火鉢のところへしゃがんでタバコ に火をつけながらいかにもうまそうにふっ と煙を吸い込みすず子の横顔を珍しそうに 眺めてい たすず子は化粧水を手のひらのくぼみに 移して両手で揉むようにして顔へ持って いったが化粧水が目にでも染みたのか一時 両手で顔を覆てい たどうしたんだい なんだか急に悲しくなったの よ何が悲しくなったん だあなたがそこにいることが不思議なの ふうん全く俺もここにいるのが不思議だな ねそう でしょ夕べあなたは2年くらいなんでも なかったなんておっしゃったけどやっぱり 2年って相当長いものだと思うわ 随分長いと思った わそうだな長いには長い ねうちにいるものは変化がないから なおさら長い気持ちだったろ え平凡なだけに苦しかった わでも考えてみると嘘みたいな気もするし

歳月っておかしなもの ねクリームをつけて パフで粉おしいお方に吐いて口紅を薄く つけて兄弟を元の場所へ戻すと鈴子は末吉 のそばへ並んで子供っぽくしゃがみ込ん だなんだい馬鹿だ なだって珍しいんだものつくづく1人って 嫌だと思った わ初めはいしくってってたけど2年も経っ てくるとなんだかしぼしてくるの よ2人は並んだままお互いを見つめあって いる変な気持ちだよ俺 は私も変な気持ちなの よすず子は末吉の手を取って手のひえきく バカねと書い た末吉はタバコの吸殻を履いに突っ込むと 急に鈴子の両手を強く握りしめ てなんだいぷんぷんおしいの匂いさせてと 鈴子の額に自分の額をギリギリと押し当て て いるすず子は遠慮もなく涙が込み上げてき てそのまま末吉の胸に持たれて泣いてい た夫の胸があるということは鈴子にとって 岩に持たれているような頼もしさであり 色々なものがいっぺんに込み上げてくる ような切なさだっ たねえあなたはお寿司が食べたいだの畳が 懐かしいだのって言っていらしてお寿司 だってあんまりうまそうじゃないし畳に いらしてもいつもこうしてしゃがんで いらっしゃるのどうし て徐々に座るようになるだろうさいっぺん に座るのはもったいないじゃ かまもったいなくなんかないわよそんな しゃがんでるの嫌よちゃんと座って ちょうだい すず子は火鉢の前へきちんと座った末吉も あを組んで座っ たすず子の長いまつ毛に粉おしいがついて いる末吉は親指で鈴子のまつ毛を撫でて やり ながら明日田舎へ帰ってもいいかいと何気 なく尋ね た鈴子は据え吉に明日田舎へ帰ってもいい かいと聞かれるとぬくぬくと温まっていた 気持ちが急に冷たくなり思いがけなく 激しい動機が打ってき たすぐ戻ってくるよ1週間もいれば用が 済むんだし一応は挨拶してこなくっちゃね ええ鈴子はしばらく黙ってい た45日くらいは何もかも忘れて末吉と 2人で静かな楽しい日を過ごしたかったの だ けれどだって昨日と今日とたった2日よ うん私会社の方はお休みにしてあるんだの

に末吉はくなのかまた火鉢の淵へ持たれて しゃがん だ鈴子は立ってすかを持ってくると炭を 火鉢に継ぎ火鉢のそばに食卓を出し た見覚えのある茶碗や箸や小皿が並び すず子が風呂へ行く前に作ったのであろう 手料理の数々が茶ダンスのガラスの中に 並んで いるその手料理を鈴子は黙ったまま 更ずつ食卓の上へ並べて太りの小鍋を火鉢 に乗せ た召し上がるでしょすず子はそう言って 火鉢から下ろした熱い鉄瓶の中へバコ焼き のりをつけて いるすず子は黒いリボンで八巻をしている ので顔が小さく見え た末吉は鈴子の今までの1人の生活が かわいそうでたまらなくなって いる菊の模様のついた紫色の羽織りが末吉 には正純に思え たすず子は食卓の支度ができると炭かごに 炭を入れておこうとガラス窓を開けた けれど刺すような風が吹き込んでいるのに 首をすめて慌てて空を見上げ たあら雪だわ 雪が降ってるの ね出窓の上に置いてある小さい炭田の上に ふけのような雪が溜まってい た火鉢の上の鍋はごとごと煮立って いる末吉は青いほれ草だの古代の頭だの 豆腐だのの煮えて動いているのをさっき からぼんやり眺めてい た田舎へなんかか少しも帰りたくはなかっ たのだけれど無事期間の報告を早く済まし てこなければ少しも落ち着かない気持ちで あるガラス戸を閉めて鈴子が日のそばへ 座ると末吉はふっと慌てて代々を小皿の中 へ絞っ た 2翌日末吉はの田舎へ帰って行っ た珍しく雪が積もっていて嘘寒い日で ある鈴子は上野の駅まで末吉を送って行き 帰りに新宿のアイデパートで同窓会がある ので鈴子は少し早い目だと思ったけれど 会場へ回ってみ た会場の食堂のサロンには懐かしい見覚え のある顔がもう45人並んでいる まあよくいらしたわさっきあなたのお噂を していたところなのよいらっしゃれば いいっ て雪が降ってるんでどうかしらと思ったの よでもみんな元気 ね同じクラスのものが2人い た1人は映画女優であの1人はもう奥さん その奥さんである日定はすず子とは大の

仲良しで今でも1ヶ月に1度くらいは合っ て いる会社へ電話をしたのよそうしたらお 休みだって え1週間お休みを取ったの よすず子はコートを脱いで溶けている 羽織りの紐を結びながら2人の間へ腰を かけ た5人はさっきの話の続き らしくの相川子 がそれで本田さんはとうとう離婚して しまって今長野へ戻っていらっしゃるん だって赤ちゃんもあるのよ旦那様は戦死 なすったんですって ね話題になっている本田ゆみ子は鈴子たち の一級上の生徒で美人で有名だっ たあんな美人も幸福に行かないものかと 鈴子は女の運命を不思議なものに思って いる相川笛子はT撮影所の女優だけれど まだ早く級で相当辛い生活であるのだと いつか彼女の告白を聞いたことがあっ た小柄で痩せた顔なのでそばへ寄らなけれ ば美しさの分からない女だっ た鈴子の仲良しの日佐田は長野の重法典の 娘で今会社員にかして平凡な幸福な家庭を 作ってい た学校を出て45年にしかならない若い 鈴子たちの同窓生のうちでは1番正直で 率直な女だっ た大柄で美人ではないけれども温かい表情 を持って いる今1人のと並んでいる奥さんは鈴子 より2級上の卒業生で鈴子は顔見知りの間 だったがあまり親しくは ないいつも両手に指輪をはめている女で この非常時にまさか金の指輪もはめられ ないと見えて今日は宝石入りの銀の指輪を 両方の手にはめてい た出歯で笑うと正面に金歯が光っている ボツボツ若いのや年を取ったのの同窓生 たちが集まり始め食堂の女ボイが紅茶と 歌詞を長い卓上へ並べ始め た相川笛子は鈴子や佐田を誘って3人で住 の席へ着い た若い者は若い者同士年を取ったものは年 を取ったもの同士で席を並べあっている ほらうつぎさんよ第2司令嬢でいってる あの人よ随分下品なエバりを着ているじゃ ないの肩から大きな鳳を張り付けてさなん なのあの趣味 は笛子は苦しそうに入り口を眺めて いるう明子は黒地の背中いっぱいに鳳の 模様のある羽織りを着て 女中を連れて会場へ入ってき たすず子とは学校時代に席を並べていた

こともあるし末吉の大学の費用はこの娘 一家から出ているということも鈴子はよく 知ってい たしかも末吉が出世する前には明子と末吉 との間に結婚話すらあったということも 知っていたし鈴子は末吉とは未だに内炎 関係にあるという自分が 悲しく今日期間報告に帰って行った末吉の 一心にはまた明子との問題が蒸し返される のであろうと明子の派手な姿を見て不安に 思われるのであっ た明子は3人の前を通っていったけれど 鈴子を見るとふに立ち止まってねえ末吉 さん戻っていらしたのあなた知って いらっしゃると不に聞い た笛子も佐田も鈴子と末吉とのことはよく 知っていたけれど明子が末吉の名前を知っ ているのが2人には不思議だっ た鈴子は不だったのでどまにして いる今夜私夜行で田舎行くんですけど末吉 さんにもうお会いになっ た 鈴子は自然に明子から目をそらしてい た明子は生き生きとした表情で中ほどの席 へ歩いていっ たやがて帝国より1時間も遅れて会は 始まったけれど何の興味もないまるで門月 の品評会のような味気ないつまらない同窓 会だっ た1番若い卒業生でまだ学生だったという 娘たちがハキハキしているだけで誰も彼も 犬のように会場の誰かれの生活を嗅ぎつけ ようとして いる鈴子は長いタシを挟んで座っている 40人ばかりの女の顔を眺めて幸福そうな 顔は見当たらないと思っ た東京へ転任してきている教師たちも今日 は23人集まっていたけれどみんな近郊の 学校とか小さい私立の学校に勤めているの らしく服装も態度も古色然として いる明子は中央に腰をかけて23人の同窓 生たちと盛に話し込んでい た鈴子たちはこの同窓会がつまらなくなっ てきたので記念写真を撮る時には3人とも 言い合わせて会場の外へ出てしまってい ただんだん嫌になるかいねみんな田舎もの 揃いのくせに急に遊ばせ言葉なんか使って おお嫌だ わ笛子が気持ち悪そうに街灯の方をすめて 笑って いる3人は寒い子がへ出たけれどどこへも 行き場がなかっ た私のところへ来ない買って帰って私の ところで同窓会をやりましょう よ

3すず子は明子にあって嫌な気持ちだった ので笛子のアパートへ行くことは賛成だっ たさえも2時間くらいはいいというので 渋谷の猿楽町にある笛子のアパートへ 出かけていっ たドアの内側へ 男の名刺が1枚落ちていた笛子はそれを 拾うとすぐ細かく引き裂いてモロッコの女 のように名刺のくを指で弾いて火鉢の中に 捨てて いるうさんね末吉さんを知っているの かしらコートを脱ぎながら佐代が思い出し たように鈴子に尋ねて いる鈴子はガラス戸の外の久しにぶらがい 笛子の白い旅を眺めながら黙ってい たもう今頃は末吉は軽井沢あたりを行って いるかもしれ ない今日から1週間だというのが鈴子には 2年間の出世よりも長いものに思われる ようだっ た今度帰ったら話をして2人の結婚をなん とかしようと末吉がいく度も言ってくれた けれど 末吉は大家族の息子なので両親や兄たちの 反対が大変だろうと考え られる今になってみれば席のことなんかも どうでもよくなっていて末吉さえ戻って くれれば自分はそれで満足しようと思うの であっ た内木さんって東京で何してるのよ笛子が こたを作りながら謝に聞いて さあなんだか知らないわお金でもあるんで 花嫁学校にでも行ってるんじゃないのへえ 花嫁学校にね私あの人学校当時から大嫌い だったわなんだか調子が高くてデコラ チーブで ね学校時代から野球の選手だのなんだのっ て色々風評があったじゃないのさっき何な のよあの態度ったら私たちに挨拶もしない で末吉さん戻っていらしたの知ってるって まるで貴族気取りじゃないの さ笛子が失礼な奴だと怒ってい た鈴子は学生時代には末吉を知らなかった のだけれど東京へ出てきて姉の家へ手伝い に行っている時弟の構造の中学時代の先輩 だというので弟から末吉を紹介され た末吉は丸の内のM工業会社へ務めていた し鈴子も京橋のD保険会社のタイピストに なったばかりの時であっ た2人は知り合って2年くらいもするとお 互いの家族たちには黙って2人きりの さやかな同性生活に入ってい た末と子の家との関係は鈴子は末吉によく 聞かされて知ってい た今夜夜行で新州へ帰ると明子が言ってい

た けれど明子はきっと末吉に会いに帰るに 違いないの だ明子はどうして自分が末吉に会う合わ ないを知っているのかが鈴子には不思議 だっ た笛子は寝転んだままポータブルを 引き寄せて暗い日曜日のレコードをかけて い たねえすず子さん 何なにって私今人生上とても困ったことが できているのよ佐田さんにも話したんだ けど私ね近いうちに神戸に行かなくっちゃ ならないのよあなた一緒に行ってくれない かしら 笛子が大きい目をくるくるさせて鈴子の目 を覗き込んで いる いつそれが今夜なのよさっきから考えてい たんだけど私1人で行く勇気がない の何さ重大事件らしいわ ね笛子はポスターのモデルになった神戸の 会社の社長から招待を受けているという話 をし た45日前にニューグランドでその社長に 招待された時に遊びに来るようにと言われ たのだそうであるまそれで神戸に いらっしゃるつもりなのええだけどなんだ か後が怖いわ私には恋人があるんだし あんなおじいさん嫌いよそんなにおじい さんなの ええはいな人だけどもう50くらいかしら おお嫌だそんな の暗い日曜日をもう一度かける笛子に鈴子 はでもその人よっぽどお金持ちですず子 さんが気に入ったの よその人はね有名な女優は嫌いなんですっ て新しい人を大きく育てていくのが楽しみ なんだっ ての帰りにはりで時計を買ってもらったの よ笛子は少々得意そうにグリーンの ビロードのケースからプラチナ台の時計を 出して2人に見せ ただからさっきから笛子さんに一体どう するつもりなのよって私言っているの いくらお金持ちだって事前心だけでこんな 散在はできないと思うわ ねが時計を覗き込んで心配そうに言うの だっ ただって私は何も言わないのに勝手に くれるんですものでもこの時計だってもう 12ヶ月腕にはめててそのうち売り飛ばし てしまおうかと思っているの よだけどそれで今夜の神戸行きはどうする つもりなの

よ鈴子が時計を自分の腕にはめてみながら を心配して いるそりゃどうしたってお礼にだけでも 行ってこなくちゃいけないと思うのよもう 切符も買ってあるのすず子さん一緒に行っ てくれ ないあら私はだめよ末吉さんが戻ってき てるんですものあら驚いたいつのことなの よ それ23日前だわ今朝に帰って行った ばかりな の 4その日から1週間は過ぎたけれど末吉は 戻ってこなかっ た鈴子は会社へ出勤していても気持ちが 重たくて1日中同機がしているような不安 な気持ちで ある伝法を打ったりいく度か手紙を書い たりしたけれど末吉からはは何の音沙汰も ない2年も待っていてその挙げ句こんな 寂しい思いをするのは嫌だと思っ た末吉が田舎へ帰ってちょうど3週間経っ たあるよ笛子が鈴子のアパートへ自動車を 乗り付けて訪ねてき た数週間前の笛子とはすっかり様子が 変わっていて着物や持ち物が豪な感じであ あ古代主の羽織りはさがの総しりで黒地に グリーンと主の大名島のお召の着物が昔の おかげもないほど笛子を立派に引き立てて い たまどこのお嬢様かと思った わ驚いたでしょどうしたって わけ私はもうこの頃は何もかも流れるまま の気持ちだわ あれから神戸に行って10日くらいもいた のよその人には現車の目かけが2人もあっ た の鈴子ははっととして何か自分の体を汚さ れたようなどにしたものを感じ た自分には考えも及ばない世界であり自分 の仲のいいクラスメートがそんな世界へ 安康と溺れていっているのが不思議だった でもどうしてそんな人はあなたが好きに なるのか不思議だわ ねあら好きでなんかあるもんですか嫌で嫌 でたまらないのよ私は長い間の貧乏に負け てしまったんだわそれにちょうど国彦さん に恋人ができたりしていて私なんだかやけ な気持ちになっていたの ね笛子は6610円札すらも持ったことも ない惨めな生活に自分の若さや美しさを 埋もれさせるのは耐えられないことだと いうので ある自分には今のこの生活は間違っている かもしれないけれどこの世の中に間違いの

ない精々堂々とした生活があるだろうかと もいうのであっ たともかく長い間苦しめていた父や母を どうやら安楽にもすることができたし自分 はこれから一生懸命映画の方を熱心にやる より他に道はないこれからはそれだけを力 頼みにしていきたいというので ある鈴子には笛子の商相が分からないでは なかったけれど もなんだか夢の中にいるような気持ちだっ た笛子の商売のように若さや美しさを歳月 と共に数え去るようなイライらしさは なかったけれども末吉とのことを考えると 自分の青春の詫びしさ味気なさも感じられ て くるだけど笛子さんは笛子さんだ自分には 生まれ変わっても笛子のようなことはでき ないことだと鈴子は恐ろしいばかりな笛子 の生活力に押されている 国彦さんのことは大丈夫な のあの人は恋人ができているんですもの 少しも未練はないわよ今頃になってなんだ のかだのって言ってくるけどもう私に何の 未練もないんですもの全ては金銭でどうに でもなるものなのね人の魂だってなんだっ てあらそんなことはないと思うわ 金銭というものはそりゃ一面非常な働きを 持っているものだし血液のように大切な ものだけれど人間の魂まで同行するってこ はできないと思うわお金がなくたって純粋 な世界ってあると思うのただ私は笛子さん の環境がそんな風になってるんじゃないか と考えるんだわ私だったら女優を辞めて しまうところ ねすず子さんだったらそうかもしれないわ ね2年間も末吉さんをじっと待っている人 だ もの笛子はそう言って何もかも汚れて しまった自分には鈴子や佐田のような 清らかな友達を失いたくないと子供のよう にすりあげて泣くのであっ たその世2人は新宿へ出て映画を見て笛子 の案内で築地の行きな料理屋へ行っ た鈴子が今までに食べたこともないような 美味しい料理が出た床の間には可愛い カーネーションが生けてあり渋い茶掛けの 軸に は竹に上下の節ありという枯れた文字が 書いてあっ たこれ 何これ鯛のお刺身に卵の黄を落としてある のよへえ随分しれたものねおつゆも 美味しい わ紫のフカフカした羽布団に座って大きい 神経の食卓に持たれているのが鈴子には

落ち着かない気持ちで あるこんな高い店をご馳走になったりして 悪いわ ねすず子はサイダーのコップを口元に持っ ていきながら眩しそうにシを眺めて いる笛子は床の間を背にしてゆうゆうと タバコをふかしていたが思い出したように ハンドバッグを広げてその中からたくさん の綺麗な獣円札を出して食卓へ置い たほら随分あるでしょ1000円くらい あると思うのこれみん神戸のからもらった お金なのよ死は1つついていないからなん だかれってるみたいだわ ね困ってる時はしわく茶の10円札が随分 尊いと思った けどすず子は怖くて卓上のさ束が見られ なかっ た女中が料理の皿を運んできて卓上の札束 に驚いて いる笛子はわざとスを卓上に置きっぱなし にして食事をしてい たすず子はなんだかわびしい気持ちで ある自分を自分で苦しめているような 険しい表情で鈴子はまずそうに食事をして いるのだっ たその世笛子を送りがてら鈴子は青山 高木町の笛子の新居へ行ってみ た神戸の修造家の人が買ってくれたという 月屋作りの行き家の中は何もかも新しい 調度が運ばれていて広い廊下屋座敷には まだ荷造りを解かない荷物がいくつもあっ た笛子の部屋はタンスも兄弟も横笛の模様 が散りばめてあって人形棚の横にはシミ線 箱までも揃って いる中が2人笛子の両親も3人の妹たちも い た一応来服と言ったいかにも賑やかな一家 であったが笛子以外はこの家の作りとは瓢 愛入れざるひどい装いが見えて鈴子には なんとなく嘘寒い感じがされ たこれだけの家族を笛子1人の手で支えて いくのは大変なことでああり笛子の 行き詰まった気持ちも鈴子には分からない ではなかっ た 52月に入ったある日鈴子のアパートに 末吉の兄が訪ねてきた鈴子はすぐ末吉の 苦境を察しことができたけれどじっと愛 たいして座っていると膝が震えてきて仕方 がなかった 末吉の兄はよく整理されたつましい部屋の 中を眺めて高人物的な微傷を漂わし ながら末吉が大変お世話になっていたそう でと言っ た鈴子はどんな意向で末吉の兄が来たのか

げには分かるのだったけれども心の中では いやいやと頭を振って神様に両手を合わせ て祈る気持ちであっ た茶を入れながら鈴子は末吉の兄の宣告を 待ってい た兄の話によると末吉は大学を出るまでの 費用をほとんどうの家から出してもらって いて内々では末吉がうの家に容姿に迎え られることになっていたのだそうであった けれども 末吉は今になってどうしてもうの家へ用し に行くのは嫌でなんとかあきこの問題を 解決してしまいたく幸3自分自らうの家へ 出向いていって学費の金は月にしてでも 返済したいと話したのだそうであっ たうの家では非常に末吉が気に入っていて ゼが火でも末吉を子に向たく戦地から戻っ たらすぐ結婚式を上げるつもりでいる 気持ちであったそう だ今度初めてすず子との問題を末吉から 聞いてびっくりした兄は一応も二王も考え あねて東京へやってきたのだと言っ た鈴子は末吉の兄の素朴な話ぶりに行為を 持ったし末吉とうの家の相談を受けたこと も嬉しかった けれど相談を受けたからと言って末吉と 別れる気持ちは少しもないので ある末吉さんはどんなお気持ちなの でしょうか手紙を出しても返事もないの ですから少しもあの人の気持ちが分かり ませんけれど もいやそれはあいつも今日帰る明日帰るで つい返事もそのままになっいのですが末吉 の移行ではうの家に用しに行く気は全然 ないのだし東京へ戻ることばかり行ってい ますよどんなにうに音を受けてもどうして も容姿に行く気はないのだと先日もうの娘 さんが23度見えたのですがね愛もしない 有り様で毎日青年団の者たちとうさぎがり に出かけて呑気にしてます よ鈴子は急におかしくなってき たいつだったか電気をつつけるとわっと 飛び起きたあの単純な表情がたまらなく 懐かしかっ た山へうさぎがりに行った末吉の姿が目に 浮かぶようだっ た内木さんの娘さんとあんたは同じ9だっ たそうでそれで一度是非あんたに会って 相談すると言っておられたんで私の方も 思い余って末吉には黙って出てきたのです よどうも困った問題 で冷えた茶をすすりながら末吉の兄は刻み タバコを出して吸っ た私の方では姉たちももう私たちのことは 許してくれているのですしなんだか義理

知らずのようですけれど末吉さんとは別れ たくないと思います今のところ私も働いて いるのですから内木さんの方のお金をゲで でも納めるようにできないものでしょう か鈴子は精一杯の気持ちで言っ たすず子はうの家との義に挟まれて小前と している末吉を考えていたのがすまない 気持ちだっ た自分を信じ愛し淡々としてくれる夫の 愛情がしみるばかりであったし急に力の わく思いであっ たその世鈴子は姉や義兄や弟の構造にも アパートへ来てもらって末吉の兄に会って もらっ た姉に少しばかり金を借りて鈴子は市場へ 買い出しに行っ た末吉の兄はよく飲むというので酒も買っ て帰っ たグツグツと煮える寄せ鍋をついて酒の 回った末吉の兄は大きな声を 立て金は天下の回りもですよなに末吉でも そのうち身を立てんもでもありません男1 匹よしになんぞ行くではありませんよ 何しろ私の親父もおふも田舎者のこちこち でギリ人情で子供を縛りつけるのですから 困ったもの ですというので ある金は天下の回りもだというのが鈴子に は胸を打つ思いだっ たそしていつかの夜笛子が料理屋で見せて くれたさた屋し1つない100円札が ぐるぐる目の前に浮かんでくるのであっ た笛子が金を憎み愛している気持ちが しみじみわかる思いで あるあるところには1人の女をおもちゃに する金が湯水のように溢れていてない ところには1人の男が大学へ行く金にすら 困っているということが鈴子にはなんだか 不合な気持ちがされてくるのであっ た末吉の兄は酔って帰ると平手で頬を撫で ながら末吉は戦地から戻って悠々とした 人物になりましたよと自慢するのであっ た 6末吉の兄は一晩ほど鈴子の姉の家に 泊まって帰って行ったが入れ違いのように して末吉から長い手紙が来 た兄がそっちへ行ったことと思う非常に いい兄だから遠慮しないで会うように度々 の手紙や伝法を ありがとう全くバカバカしくて君に手紙を 書くのも嫌だったの だ田舎の人間はみ正直すぎて帰って困って しまうの だみんな悪いやだったらどうにでもなるの だが正直一途でどうにもなら

ん心配をしていると思うが2年も僕を待っ ていた恐るべき愛情に対していぺの手紙を 書くに忍びず今日明日と帰る日のみ考えて ついにこのような義にな 僕が東京へ戻るというと母の病気が重く なるのだ要するに心配病気とでも言うので あろう かこの間畑出ていて偶然にうの娘にあっ たカラスの孔雀に予得るごとき夫人 なり久しく見ざるうちに東京スタイルに なりてなかなかの派手のみ なり23時間畑につったってこの華麗なる 空こ城と対談し た君と結婚している話をしてやったところ まだ席の入っていない結婚は結婚している とは言えないよしにてそんなことは許す から今からでも遅くないだろうということ で苦笑した次第 なり君にいずれ会うそうだあたところで 鈴子という女はなかなか君に幸福する女で はないと言ったら泣き出してしまった よ僕はいって 剣今のところ僕の会社の姉妹会社である 満州工業の方へ就職を頼んでいるうまく いけば2人で手に手を取って安山行きに なるかもしれない ね何事によらずゆうゆうと急がず騒がず 現在の仕事にせを出していてくれた 前まだ2週間くらいは帰れない一歳合細の ことを解決して一路安山へ行きたい計画を 立てて いるこれから大いに働いて君にも楽をさせ てやりたいと思って いる鈴子どの 末吉 鈴子は手紙を読みながらクツクツと泣き 出してい たよく末吉が戦場から手紙をよし て戦争をしてあらゆるものを崩していくの は朝飯前だがこれだけのものを以前に返し ていく建設の努力というものは一生の仕事 であり夫婦の間もそんなではないかと思う と言ったことを書き送ってきていた けれどしみるばかりの手紙であっ た日曜日だったので鈴子は東中野の佐田の 家へ遊びに行ってみた佐田の夫の太郎氏も 在宅佐田は赤ん坊に牛乳を飲ましてい たね笛子さんが夕べ遊びに来たのよ佐田は 薄のさしている縁側へ座布団を持ってきて 夕べとても酔っ払ってきて私には結局何も なかったって泣いてるのよどうかしてるん だわあの 人あらだってあんなに幸福草だったのに ねやっぱり何かしらあの人寂しいのよ満足 がないのよ盛に結婚婚して女優をやめた

いって言ってたわよねあなたそう言ってた わ ね太郎氏は赤ん坊のそばに寝転んで新聞を 読んでい た佐田夫婦は見合い結婚でクラスでも1番 早く結婚したのだけれど今はこの地味な 夫婦生活もちゃんと板についていて末吉の 手紙ではないけれど急がず騒がずの静かな 生活で あるそうして会えば物価の高くなった愚痴 ぐらいのところで夫婦生活の不満について のため息をこの2人から聞いたことが ないだって私たちクラスのうちでもあの人 は風変わりで学校出てからだって女優に なったりしてしかもこの頃は合成な パトロンがついたりして何が一体不足なん でしょう 佐田はみかを向きながら笛子の気持ちが 分からないと言って いる笛子君も前のようにのんびりしなく なった な太郎氏が新聞を片寄せてぐっと果物皿へ 手を伸ばしてみかを取ったええ本当よ来る なり帰ることを言ってたり前はうちでご飯 出してもおいしいおいしいって言ってくれ てのにこの頃は上の空なのよ食欲もなさ そうなのね胃袋にお札の塊りが使えてる 感じ よだから太郎ったらあんまり持ちないもの を持つもんじゃないっ て笛子さんもお金さえなきゃもっと楽しく なっただろうっていうの よすず子はいつだったか築地の生な亭で 笛子にご馳になった夜のことを思い出して い た美味しいご馳走ではあったけれど しみじみと霊を言いたいような雰囲気では なかったことを何から来たものかしらと 鈴子は長い間考えていたもの だ今胃袋にお札が使えているのだろうと 言われてみると左はうまいことを言ものだ と自分もその言葉には打点が行くのであっ た 7結局はお金のない私たちの方が幸福なの ね佐田はそう言って赤ん坊を抱き上げると 赤ん坊の手をしゃぶって柔らかくしながら 小さい爪を切ってやって いるこの間の同窓会の時だってお金のある 人らしいっていうのはなんだかみんな生の の人間みたいに見えたわ ね鈴子も爪切りを借りて縁側で爪を切っ た笛子の生活明子の生活さえのこうした 慎ましい 生活同窓生のそれぞれの生活を見ていると すず子は自分の生活もなかなか幸福なもの

と思わざるを得 ない世の中には似ても焼いても食えない男 もたくさんいるだろうけれど佐田の夫太郎 氏のような高人物もいるし末吉のような 誠実のある男もいるの だ鈴子は急に立ち上がってパタパタと膝を 払い ながら私近いうちに満州へ行くかもしれ ないのよと言っ た末さんが満州に食が決まりそうなのよ それでもしかしたら私も一緒に行くことに なるわへ遠いじゃないの一体満州のどこな の よ安山ってところですって生鉄所のある ところなんですって よ随分遠いわね えもう今度は戦争に行くんじゃないから私 どこまでもついくつもり乞食したって2人 でいる方がいいわおやおやご馳走様でも2 年も辛抱したんだからとても偉い わじゃああなたは太郎さんがもし出生し たらそんなに待てないのあらそりゃ待つわ よ当たり前じゃない のおやおやうちのさ君そんな親切なとこも あったのか ね太郎氏はニコニコ笑いながら思い出した ように赤ん坊を定の手から受け取って高く 赤ん坊を抱え上げて いるおしっこ大丈夫かいえ今おしめ変えて やったの よ太郎氏は赤ん坊を抱いて狭い庭へ降りて いった佐代は満足そうに夫の後ろ姿を眺め ている ねえ学校の開放送ってきたの見たええ来 てるわよ笛子さんが行動改築募金の寄付を 100円もしてるんで太郎は驚いてたわ ええ私もびっくりしたのよあんなことし ない方がいいわね私2円しか送らなかった けどあら私だって3円よ 夕べ笛子さんに怒ってやったのそりゃ たくさん寄付するのもいいけど笛子さんの 今度のこと色々風評されてるんですもの 軽蔑されてたくさん出すこともないじゃ ない のだって少しだとまた何か言われてよ うつぎさんとこだって30円ねあそれは そうと本田さん亡くなったの知ってる へ知らないどうして亡くなったのあら新聞 に出てたじゃないの自殺なすったのよご 主人が戦死なさるしせっ詰まった気持ち だったのね女の気の弱いのもよりけりだ わ本田さんのご主人戦死なすった のすず子は学校でも一番大人しかった本田 子のした姿を思い出してい た学校を卒業して45年も経たない間に

それぞれの生活が決まってしまい肩もでき どうにか色もついてきて いる女の苦労というものはこうした戦争 状態が長く続くほど様々な形で汗のように じわじわ滲んでくるものであろう か支えていく力をなくした時の女のぱ 詰まった自滅する気持ちはこれはどうして 何で食い止めて良いものなの か世の中というものは案外冷たなもので あり頼りにならないものだと鈴子は思うの であっ た笛子のように泥にまみれるのはたやすい ことだけれども地味な家庭の支えになって 生きるということはなかなか難ことであり 人もなれっこになっていて親切には地味な 女の力を認めてくれないもの だ期間の日を2年も待っていた女心を感謝 してくれるのは結局は夫以外には1人だっ てありはし ない末吉の自分を愛してくれる気持ちも2 年の感謝があればこそ何者にも同じないの だと 鈴子はみかの酸っぱいのにむせながら涙を 目の縁に溜めているのであっ た本田さんかわいそうね本当よ正直な言い 方だったわ私たちそばにいたんだったら 慰めてあげたんだの に旦那様が出世した後には奥さんたち随分 いろんな苦しみもあるわけ ね末さん無事に戻ってくれて私は感謝し なくっちゃいけない わその日から23日してである鈴子の会社 へ内木明子が尋ねてき た しばらく明子は洋服を着て毛皮の街灯を着 ていた鈴子は同窓会の時のようにどぎまぎ した気持ちではなくちゃんとした表情で 狭い溶接室の椅子に腰をかけ たグリーンの短い事務服も目の前の毛皮の 街灯と同じ位置にあるプライド で末吉さんに色々あなたのことを伺ったの よ鈴子は微傷してい た明子はハンドバッグの口金を開けたり 閉めたりしていた がそれで私の家ではは父なんかとても怒っ てるんだけどあなたも知っていらっしゃる ように私と末吉さんの問題は末吉さんが 大学へいらしてる頃から決まってたんだし あんまり安心しててこんなことになって しまったのよ本当にまさかあなただとは 思わなかったんです もの同窓会があったでしょうあのちょっと 前に人に聞いて私とてもびっくりして しまったの よ姉のことを言い出すの変だけど末吉さん

のとてもお出来になるのを父が見ていて中 学校だけで辞めさせるのかわいそうだっっ て大学へ入れてあげたんですって大学を 出るまで大変なのですもの ねそれに私の家へ来ていただくお約束も 末吉さんご自身ご存知なのよそれを今に なってこんなことだからっておっしゃって も父が承知しないし 私だってもう皆さん末吉さんと結婚するっ て知っているんですものとてもとても困っ てしまっている のすず子は頭の中中を金貨がピカピカ光っ て渦をなして流れていくのが見えるよう だっ た早く末吉と2人で安山とやらへ行きたい と思っ た末吉さんのおタはうちの小作の人なのよ だから末吉さんだって非常に無責任だとお 家の方々に叱られていらっしゃるようなん ですし私はあなたとは同じ学校だったし まるで小説みたいだと思ってとても私反問 しているのだから末吉さんにも私から あなたにご相談してみるって言ったの よ本当に私たちすまないと思います わ私だってあなたにすまないって思って いるんです けど鈴子は変な気持ちだっ た明子はしばらく黙っていたがふっ 思い出したよう にそれでねうちの父の意向なんですけれど あなたも私のお友達だし不幸にするのは 悪いからってそのついとしてあなたを服に するだけのことをしたらいいじゃない かって私ここに父から預かってきてるんだ けど受けてくださる かしらそう言ってあき子は水色のふさに 包んだものをそっとタの端に乗せるので あっ たすず子はそのぼってりしたチリメンの ふさ包みをじっと眺めていたけれど 握りしめている自分の指と指の間に ニチニチした汗がたまるような嫌な気持ち を感じてい たそれ何です の失礼なのですけど500円預かってきた の よさすがにあき子は50000円と小さい 声で言った500円 え私が末吉さんと別れるためにいただくの かしら私そんなお金頂いたって今のところ 何1つ買いたいものもないし別に不住もし ていませんのよ帰って私たちの方から末吉 さんの拝借しているお金を返そううって 相談してるくらいなんです もの鈴子は腕時計を眺めて立ち上がっ

た友情のない仕方ではあったけれど女の 友情とかなんとかで干渉的になっている時 ではないと 思い末吉さんからお聞きになった通りで私 は今あなたに何も言うことはできない 気持ちですの勝手かもしれませんけれど私 これからまだ仕事もあります しそう言って鈴子は廊下の方へ行きかけ た廊下の外には明子の女中がつねとまって いる明子はむっとしたのかふを街灯の ポケットへ入れるとそのまますず子には物 も言わずに扉を押してエレベーターの方へ 勢いよく出ていっ た小さい女中は驚いたように跡を追って いる鈴子はトイレットへ入って洗面所で キシキシと手を洗っ た水は激しく白いタイルの洗面台の中へ 溢れて いる信じ合っている道たりた幸福の味わい をすず子はしみじみと感じ鏡の中の自分の 顔にありがとう言っ た太いけれど優しい眉大きい茶色の目 厚ぼったいけれど小さい唇頬の艶の美し さ額は狭いけれどまるで子供のように 柔らかい ハエ鈴子は下を出してらっこのように鏡の 中へ首をすめ た 9相川笛子の名前が小さく新聞の広告に出 て いる女主人公の友達になってちょっと テニスをする場面があるのよそれっ りだってこんなに新聞に名前が出るように なれば閉めたもんじゃないの う笛子はアイスクリームを舐めながらそれ でも不満そうな表情だっ たしれたスーツを着て街灯は濃い茶の ホームスパン帽子も茶のベレーで今夜は 笛子は付けまつげをしている夕暮れから 振り出した雨はなかなかやみそうにもない 寒い夜だ笛子は丁寧に新聞を畳んでハンバ にしまうとふっとため息をついて ああこんな生活もつまらなくなっちゃった わ今日も神戸のと一緒にご飯食べる約束し てたんだけどすっぽかしたの芸者ばっかり 相手にしてたんで先生勝手が分からない らしいの ね私をどうしたら可愛がれるかって イライラしてんの よ笛子はそう言ってタバコをふっとしてい たがあっと小さい驚きの声をあげて入り口 の方を眺めて いる私の恋人が行くわよ国彦さんよほら あの女を連れ てすず子がその方を見ると昔見覚えのある

笛子の恋人が映画女優らしい女を連れて2 階へ上がっていくところだっ た落ち着きを取り戻しした笛子はふふんと くじりを曲げて笑いながら一時ニヤニヤし ていてあの女よっぽど国彦に惚れてるわね 自分でみんな荷物持ってるじゃないの幸福 そうだ わへえそう かしらすず子は心のうちに同じ女学校を 卒業した者同士が卒業してお互いに生活が 変わってくるととその道によってかしこし で女が買い物を持っているだけで男に惚れ てるとか惚れていないかが分かるものなの かと鈴子は1人でつくづく感心して いるやがて2人は喫茶店を出て雨の歩道を 歩い た鈴子の傘へ入って笛子は何気ない風に 鼻歌を歌って いるバシャバシャとこのまま自動車か何か に惹かれたいわもう生きているの嫌 だいやねなぜまたそんなことを考えるの かしら1番今幸福そうじゃない のあんた腹じゃ私を軽蔑しているくせに ねえすず子さんこれからあんたお寿司奢っ てよ えお寿司奢ってちょうだいっていうのよ 昔時々月給日に私に何か奢ってくれたじゃ ないの よなんだか冷やかされてるみたいね馬に 食わせるほどお金のある人が何言ってるの よこんな汚い金なんか今使いたくないの 今夜は綺麗な人の働いた綺麗なお金でご 馳走になりたい わ2人は銀座に入って行って安そうな 寿司屋を見つけて歩い たねちょっと待ってよどうした のこの傘持って て車屋のしまりのある街灯の下で鈴子は ハンドバッグから財布を出して中身を調べ た笛子は鈴子の金を調べている素朴な女 らしさに参ったものか急にぐつぐつと声を つまらながら笑っているような泣いている ような表情で鈴子の汚れた財布の中を覗い て いるあるわ大丈夫 ほら3円ちょっとあるわよ見せてよほら あるじゃないのうんあるある大丈夫だわ ね2人は寿司屋へ入って行っ た縄のれをくぐっで狭い腰かけへ腰を かけると笛子は頬をついて指の先で時々涙 を吹いて いるどうしたの急に黙り込んだりし てどうもしない わ昔みたいに貧乏になった気持ちを味わっ てるのよふっと昔を思い出したら泣きたく

なったのでも泣くとまつ毛が取れちゃう からこうして突っ張ってるの バカな笛子さん ねすず子は大きな番茶茶碗をふーふー吹き ながらクスクス笑っ た穴子2つ生い2つ小肌4つ赤貝1つ マグロ4つ卵2 つ綺麗な字ですず子がメモの四辺に注文を 書きつけて いる赤貝はすず子が好きだった 注文の髪を小僧へ渡すと鈴子は晴れやかな 顔 で直江さんがいるとなおいいわねあの人 とてもアワビが好きなのよと寿司台の方を 楽しみそうに眺めて いるねえあんた満州へ行くんですって え直江さんに聞いたのそう相当羨ましい話 だっ てそうでもない けどすず子はう明子に会った話はしなかっ たもう何も話をしなくても末吉はちゃんと 戻ってくるのだしこれから楽しいことは いっぱいなの だやがて寿司が出てきた2人は黙って 味わいながら寿司を食べ た店の寿司台の方では おいこれは南部好きの米だいと酔っ払って 尋ねている客が ある雨は小になったのか往来で女の笑う声 がし た寿司を食べてしまって鈴子が感情をして くださいと言うと小僧は感情書きの小さい 髪を立派な服を着ている笛子の方へ持って 行っ た笛子は知らん顔をしてニヤニヤ笑 鈴子は笛子の前の感情がきを決まり悪そう にとって感情書きの上へ財布から しわくちゃになっている50戦札を出して 丁寧に23枚底へ並べておい た

初出・・・『オール読物』昭和15年1月

【もくじ】
00:00 1.
09:21 2.
17:34 3.
25:01 4.
34:04 5.
41:18 6.
48:27 7.
55:02 8.
01:01:29 9.

林芙美子作品リスト

林 芙美子
(はやし ふみこ、1903年〈明治36年〉12月31日 – 1951年〈昭和26年〉6月28日)は、日本の小説家。本名フミコ。山口県生まれ。尾道市立高等女学校卒。複雑な生い立ち、様々な職業を経験した後、『放浪記』がベストセラーとなり、詩集『蒼馬を見たり』や、『風琴と魚の町』『清貧の書』などの自伝的作品で文名を高めた。その後、『牡蠣』などの客観小説に転じ、戦中は大陸や南方に従軍して短編を書き継いだ。戦後、新聞小説で成功を収め、短編『晩菊』や長編『浮雲』『めし』(絶筆)などを旺盛に発表。貧しい現実を描写しながらも、夢や明るさを失わない独特の作風で人気を得たが、心臓麻痺により急逝。
その生涯は、「文壇に登場したころは『貧乏を売り物にする素人小説家』、その次は『たった半年間のパリ滞在を売り物にする成り上がり小説家』、そして、日中戦争から太平洋戦争にかけては『軍国主義を太鼓と笛で囃し立てた政府お抱え小説家』など、いつも批判の的になってきました。しかし、戦後の六年間はちがいました。それは、戦さに打ちのめされた、わたしたち普通の日本人の悲しみを、ただひたすらに書きつづけた六年間でした」と言われるように波瀾万丈だった。
(ウィキペディアより)

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#朗読 #林芙美子 #短編小説 #文豪

6 Comments

  1. 23:15あたり、「笛子さん」と読むべきところを「鈴子さん」と間違えています。すみません🙇‍♀️🙇‍♀️他にも読み間違いあるかも知れませんが、お見逃しください🙇‍♀️🙇‍♀️💦

  2. 2年間の別れが2人の絆が強く、末吉を見送り同窓会に。明子の[嫉妬心]が…。フエコは(お金に溺れ、贅沢な構え。)突然末吉の兄が尋ねる。兄は[金は天下の回りもの…👋]鈴子は末吉を信じ…。ハッピーエンド笑顔]フエコも…元に戻り鈴子と寿司を…。幸せは(心)次第。

  3. 林芙美子先生の小説は戦後のお話がほとんどですね。 私達の今があるのは先輩のみなさんの頑張りのお蔭だといつも思わされます。鈴子さん、ふえこさんのお幸せをいのります。

  4. 久しぶりに林芙美子作品に聴き入りました。
    女性ならではの細かい描写が、また切なくもその時代の情景とかがいいですね☺️✨
    サダエ夫婦が愛らしく感じました😆💕

    ありがとうございました🤗🌟

  5. 末吉さんは戦争で生死の境を味わったかもしれない。無事に帰ってきたからには自分を大事に生きていくと思いました。
    笛子は流れに身を任せているようにみえるけど、自分を認めてくれる人間がいることで心安らかじゃないのかな。たとえ神戸の男でも。そして鈴子には心の浄化をしてもらって。お金も大事、友達も大事だと思いました。

    あべ様の朗読は私にとってとても大事な宝物です。有り難うございました。

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